Cognitive adventures 2017

Cognitive adventures 2017

2017年10月、ワルシャワ・ポーランドにあるコペルニクス科学センターで開催されました。同センター主催。

コペルニクス科学センター

この年は、身体的認知、人間工学、学習科学等、各国異業種の研究者たちが集い、超越科学(trans-science)の視座で「人の認知様式の不思議に迫る」試みでした。

参加者数はのべ400名強だったかと思います。
おそらく教育関係者は少なく、「如何にして子供を導くか」の観点はさておき、この集まりを楽しんでいるようでした。
 

カリフォルニア大バークレー校のD.Abrahamson氏による講演およびセミナーは、特に身体論・認知論・文化歴史論に触発された新しい学習観を提唱するものでした。
そこでは、数学をすることも音楽を奏でることも、象徴的な身体の動きもすべて一体として捉えられるようでした。

数学的に考えることは本来的に感覚運動に由来しますが、数学的と呼ばれる文化的運動とは何らかのギャップが生じます。これは、同じ数表やグラフについて、教師のみるものと生徒のみるものとが同じとは限らないことにあたります。
それでも教師も生徒も人として、色の彩度や明度の識別、リズムの体感、パターン認知、身体運動の協応といった認知・認識機構を備えているのであり、この共通性こそが教育可能性の根拠になります。生徒の活動を新しい環境下でガイドするような教材をデザインしたい-これが身体化デザイン(Embodied Design)の基本思想です。
数学の基本的概念は、協応的な身体の動きによって具体化されますが-比例が直線を保つ動きであるように-、いつまでも身体運動のレベルで留まっていては文化歴史的に継承されてきた「数学」にはなり得ません。身体運動を可能にする空間、空間中の動きを描写する平面、平面上の描写を表記する記号体系、…、有効な媒体を駆使して、当初の協応的な身体の動きは具体化の層を変えていきます。


このように考えてくればもはや「数学は抽象的」とは言えなくなり、紙面上の記述、身体や物体の運動など、あらゆる様式でしっかりと具体化されています。数学的に考えることには、表現形態の変換とみることが関わるため(文・文章を図や記号にかきかえるときの最も頭を使うことは誰しも経験しているでしょう)、身体化デザインの基本思想は、有機的な数学教育を構想する上で十分な示唆を与えてくれます。

 
ワルシャワの旧市街。
いたるところに戦時中の爪痕がそのまま残されていました。