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高次局所自己相関特徴と重回帰分析による画像計測

2.3.1節で示した高次局所自己相関特徴は、画像枠内の対象の位置が変わっ ても変化しない特徴であり、しかも、画像内の対象に関して加法性を満たす基 本的な画像特徴である。これらの性質は画像計測にとっても好ましいものであ る。画像から抽出した高次局所自己相関特徴と重回帰分析による例からの学習 を組み合わせて使うことにより、例となる画像とそれに対する望みの計測結果 を例示することにより、システムが自動的に計測課題に有効な推定方法を学習 できるようになると期待できる。

今、学習に用いる対象画像の集合を $\{f_i(\mbox{\boldmath$r$})\vert\,i=1,\ldots,N\}$、画 像$f_i$に対する望みの計測結果を $\mbox{\boldmath$y$}_i$、特徴ベクトルを $\mbox{\boldmath$x$}_i$とすると、重回帰分析は、望みの計測結果 $\mbox{\boldmath$y$}_i$ と推定値 $\mbox{\boldmath$z$}_i = A^T \mbox{\boldmath$x$}_i + \mbox{\boldmath$b$}$の平均2乗誤差が最も小 さくなるようにパラメータ$A$および $\mbox{\boldmath$b$}$ を決定する手法である。

各計測課題に対する最適なパラメータが求まれば、システムは新たな入力画像に 対する計測値の推定結果を高速に算出できるようになる。

望みの計測結果 $\mbox{\boldmath$y$}$の与え方は、計測課題に応じていろいろ考えられ る。たとえば、面積や対象の数のような計測の場合には、 $\mbox{\boldmath$y$}$$1$ 次元の数値になり、異なるふたつの対象の個数の同時計測の場合には、 $\mbox{\boldmath$z$}$は各対象の個数を含む$2$次元のベクトルとなる。

新たに学習データを増やしたい場合や、学習データが一度に少しずつしか得ら れないような場合には、逐次的な学習が必要となるが、線形重回帰による学習 の場合には、すべてのデータが一度に与えられた場合と結果的に同じ係数行列 を計算するための逐次学習方式が存在する[31]。

具体的な応用例として、たとえば、画面内の2種類の直径の異なる粒子の個数 を同時に計測する課題を学習させてみた。学習用データとしては無作為に生成 した2種類の粒子を含む画像を用いた。$40$枚の画像を学習データとして、重 回帰分析により最適なパラメータを計算した。この場合、教師信号としては、 $\mbox{\boldmath$y$} = (\mbox{大きい粒子の個数},\mbox{小さい粒子の個数})^T$を用い た。図3にテスト用の画像の例を示す。学習したパラメータ を用いて粒子数を推定すると、たとえば、画像(a)に対して $\mbox{\boldmath$z$}=(4.10,
5.88)^T$、画像(b)に対して $\mbox{\boldmath$z$}=(3.09,0.888)^T$、画像(c)に対して $\mbox{\boldmath$z$}=(1.97,3.02)^T$であった。量子化ノイズにもかかわらず、ある程 度の推定結果が得られている。

図 3: 大小2種類の粒子の同時計測
\begin{figure}\begin{center}
\epsfile{file=circle1.eps,width=20mm} \hspace*{2mm}...
...dth=20mm} \\
(a) \hspace*{17mm}
(b) \hspace*{17mm}
(c)
\end{center}\end{figure}

学習用のデータを変更することにより、同様の手法を別の課題に適用すること ができる。そこで、次に、対象の形によらない位相的特徴の計測課題を学習さ せた。ここでは、画面内の分離した孤立対象の個数を推定させた(図 4)。これらの個数は対象の形に全く無関係である。さまざまな 形の分離対象を含む$48$枚の画像を学習データとして、重回帰分析による 学習を行った。教師信号は孤立対象の個数とした。その結果、任意に与えた画 像に対して正しく分離対象の個数を推定できるようになった。

図 4: 孤立対象の個数の計測
\begin{figure}\begin{center}
\epsfile{file=nobj1.eps,width=20mm} \hspace*{2mm}
\...
...dth=20mm} \\
(a) \hspace*{17mm}
(b) \hspace*{17mm}
(c)
\end{center}\end{figure}

興味深いことに、結果としてシステムが学習したパラメータが、位相数学にお けるオイラーの公式と関係していることが証明できた。ここで重要なのは、オ イラーの公式をプログラムとしてシステムに教えたのではなく、学習例からシ ステムが自動的に学んだ点である。また、この場合には、平行移動だけでなく 回転に対しても不変となっていて、画像を画面内でどのように置いても正しく 計測できるようになった。



平成14年7月19日