次に、クラス内で形が変動する対象の認識実験を行なった。実験に用いた対象は
種類の植物から採取した木の葉である。それぞれの木の葉を一つのサンプルとした。
それを図7.4に示す。サンプル数は合計
枚(
種類
枚)である。
各輪郭に対して複素自己回帰係数と複素PARCOR係数を前と同じ方法で求めた。木の葉 には各クラス内での自然な変動があるため、識別法として、まず特徴ベクトルを判別 分析し、判別空間上での各クラスの分布を正規分布と仮定して、ベイズ識別方式によっ て識別する方法を用いた。ここでもleave-one-out methodを用いて正識別率を推定し た。
表7.2に識別率を示す。誤認識したものの多くは比較的類似した
モクレン(magnolia)とプラタナス(platanus)間であった。また、カエデ(maple)
は正しく認識できた。複素PARCOR係数の方が複素自己回帰係数よりも高い識別率を
与えている。複素PARCOR係数を用いた場合の識別率は、 次以上のモデルで
%以上である。また、複素 PARCOR 係数を用いた識別では、モデルの次数の増加とと
もに識別率が向上していくのがわかる。一方、複素自己回帰係数ではそうではない。
この原因を調べるために、モデルの次数(
)に対する平均2乗予測誤差の減衰特
性を調べた。各クラスの平均を図7.5に示す。これから、カエデ以外の
木の葉では、
次以上のモデルでは平均2乗予測誤差があまり減衰していないこと
がわかる。つまり、低次のモデルで形の特徴がかなり表現されていると考えられる。
認識実験の結果は、このような場合には複素PARCOR係数の方が高次のモデルで混入さ
れるノイズの影響に対してより頑健であることを示している。これは、前述のように
複素自己回帰係数はモデルの次数の増加にともない全ての値が更新されるのに対し、
複素PARCOR係数は低次の係数の値をそのまま保存しているためである。