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既知対象による入力画像の計数

高次局所自己相関に基づく特徴は、画面内の対象の位置に不変で、しか も、対象の数に関して加法性を持っている。そこで、$K$ 個の対象の特徴ベクト ル $\{\mbox{\boldmath$f$}_j\vert j=1,\ldots,K\}$ をシステムが既に知っていれば、それらの対象を 含む画像から、その画像にどの対象が何個含まれているかの計測が可能となる。つま り、$K$ 個の対象のうちのいくつかを含む画像から得られた特徴ベクトル $\mbox{\boldmath$x$}$ を、既知の特徴ベクトル $\{\mbox{\boldmath$f$}_j\vert j=1,\ldots\}$ の線形結合に分解す れば、その結合係数がちょうど各対象の個数を表すことになる。 $\mbox{\boldmath$x$}$ の分解を

\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$x$} \sim \sum_{j=1}^K a_j \mbox{\boldmath$f$}_j = F \mbox{\boldmath$a$}
\end{displaymath} (364)

とする。ここで、$\sim$ は最小2乗近似を意味し、 $F =
[\mbox{\boldmath$f$}_1,\ldots,\mbox{\boldmath$f$}_K]$, $\mbox{\boldmath$a$} = (a_1,\ldots,a_K)^T$ である。最 適な結合係数ベクトル $\mbox{\boldmath$a$}$ は、
\begin{displaymath}
\mbox{\boldmath$a$} = (F^T F)^{-1}F^T \mbox{\boldmath$x$} = F^{+} \mbox{\boldmath$x$}
\end{displaymath} (365)

で与えられる。ここで、$F^{+}$$F$ の一般逆行列である。この分解は、ちょ うど正準パターンマッチングに対応している[124]。

理想的には画面内に既知の対象が重ならないで何個か存在するとき、高次局所自己相 関特徴の加法 性から、(8.18)式により求めた結合係数は整数となるが、実際には、パター ンの変形やノイズなどのために整数とはならない。従って、解を整数の範囲で探せば (例えば、四捨五入)、画面上の個々の対象を切り出すことなく一括して同時に認識 し、かつそれぞれが何個存在しているか高速に計測できる。

上記の方法では、各対象の特徴が既にわかっているとしたが、今度は逆に、各対象の 特徴をいくつかの対象を含む画像の集合から推定する問題を考える。つまり、システ ムは各対象の特徴 $F$ を知らないが、教師が画像を例示しながら、その画面に含ま れている対象の名前 $L_j$ と、それらが幾つ存在するかの個数 $a_j$ のみを教えて、 各対象の特徴 $\mbox{\boldmath$f$}_j$ を学習する。ただし、教師は「この部分が $L_j$ である」 というような指示はしないものとする。特徴の加法性を利用すると、各対象の特徴の 推定が可能となる。具体的には、平均2乗誤差

\begin{displaymath}
\varepsilon^2(F) = \mbox{E}_i \vert\vert\mbox{\boldmath$x$}_i - F \mbox{\boldmath$a$}_i\vert\vert^2
\end{displaymath} (366)

を最小とするような $F$ を求めればよい。解は、
\begin{displaymath}
F = R_{XA} R_{AA}^{-1}
\end{displaymath} (367)

のように陽に求まる。ここで、$R_{XA}$$R_{AA}$ は、それぞれ $\mbox{\boldmath$x$}$ $\mbox{\boldmath$a$}$ の相互相関行列と $\mbox{\boldmath$x$}$ の自己相関行列である。



Takio Kurita 平成14年7月3日