出来事

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2022年9月9日 浮穴が2022年度日本動物学会 学会賞を受賞しました。

 1878年に創設された日本動物学会は、我が国でもっとも歴史ある学会の一つです。歴代受賞者は、日本の生物学研究をリードしてきた著名な先生方であり、そのような偉大な先達の足元にも及びませんが、少しでも近づけるように今後も努力していきたいと考えております。これまでご指導いただいた先生方、共同研究者の皆様、ラボメンバーの皆様に心より御礼申し上げます。引き続きご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。
 第93回早稲田大会にて授与式の後、重要文化財である大隈記念講堂にて受賞者講演をさせていただきました。大変貴重な経験をさせていただきました。
 受賞の研究内容は、下記のNPGL研究成果公表(2017年8月)のところにも記していますので、そちらもお読みください。
 受賞者講演の要旨とスライドを掲載させていただきます。

受賞タイトル:新規神経ペプチドの同定と生理機能に関する研究
浮穴和義(広島大学大学院統合生命科学研究科)

 私の専門分野は、動物の脳ホルモンを中心とした新規脳因子の探索・同定に基づく「神経内分泌・代謝学」である。その研究のベースとなるのが、卒業研究時に行った環形動物の生理活性ペプチド・神経ペプチドの単離・精製であり、自らが発見したペプチドが環形動物の産卵行動を惹起させたという出来事の感動は今でも忘れられない。その後も、神経ペプチドの単離・同定の技術・経験を活かし、鳥類ウズラの間脳視床下部から新規の脳ホルモン(GnIH)の発見に貢献した。その後、原索動物ホヤのオキシトシン系ペプチドを同定し、機能解析を行い、本ペプチドが浸透圧調節に関与していることを明らかにした。さらに、26RFaという神経ペプチドが鳥類の摂食行動に関わるということを見出した。一方、両生類の皮膚に存在する自然免疫の要の因子である抗菌ペプチドの同定に関する研究も行った。このように動物の神経・内分泌・行動・免疫に関わる様々な生理活性ペプチドの研究に携われたことは、幸運であったと思っている。
 2006年に独立研究室を主宰する立場となったのを契機に、「脊椎動物の脳に存在し、摂食行動などの本能行動に関与する未知の神経ペプチドを発見する」という独自の研究テーマを立ち上げ、研究室のメインの仕事とした。その結果、どの動物種でも報告されていない新規の長鎖神経ペプチド(neurosecretory protein GL: NPGLと命名)の前駆体遺伝子を鳥類のニワトリから発見することができた。ニワトリに加え、哺乳類のマウスやラットを用いた研究から、NPGLが摂食行動や脂肪蓄積などのエネルギー代謝調節に関与していることを見出した。
 受賞者講演では、これまで行ってきた神経ペプチドの研究を振り返りつつ、私が関わった神経ペプチドの構造と機能の普遍性と多様性を紹介したい。

受賞者講演スライド(PDFファイル)

2021年9月16日 恩師の筒井和義先生がご逝去されました

筒井先生が亡くなられ、しばらく経ちましたが、学会等でも広島での様子はどうだったのか聞かれます。下記に葬儀後に関係の方々にお送りしたメール内容を転載させていただきます。浮穴
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関係の皆様

 この度の筒井和義先生のご逝去に際し、皆様方からご丁重なご弔意ならびにご厚志を賜りまして心より御礼申し上げます。
 筒井一門を代表し、僭越ながら最初に学位をいただいた私から御礼のメールを差し上げることをお許しください。
 新型コロナ禍の中、広島県も緊急事態宣言下であり、ご遺族からは葬儀参列を遠慮してほしいとの申し出ではありましたが、最後のお別れがしたく、同門の産賀崇由氏と9月18日のご葬儀に無理を言って出席させたいただきました。

 筒井先生のお顔はお奇麗で今でも起き上がって研究の話をされるのではないかと思ったほどです。4月末に食道がんが判って5月14日に広大病院に入院され、僅か4ヵ月で他界されるとは夢にも思っておりませんでした。当初、「1月だけ入院してくるので、また」と言われていた通り、筒井先生が特任教授として使われていた広島大学の居室には、実験データや書きかけの原稿が、研究への執念の表れのようにそのまま残されていました。その前の1報はFrontiers in Neuroendocirnology誌(Elsevier)へ入院直前に投稿され、先日リバイス指示が戻ってきた状況です。共著者の私と産賀氏で何とか完成させたいと思っております。

 また、入院中も何度もお電話で、延期となった国際比較内分泌会議(ICCE19)を気にされておられました。IFCES会長として日本での開催を責任をもってやり遂げたいという強い想いを最後まで持たれていました。昨年3月に早稲田を離れる際、新型コロナ感染症拡大の影響で最終講義を行うことはできませんでしたが、「最終講義は仙台で」というお考えが叶わず残念です。国内外の多くの研究者からも弔意のメールの中で、今後の関連学会で追悼シンポジウムを開催しようとのお声がけをいただいています。

 昨年11月時点で筒井先生がまとめられていた業績に少し加筆したものを添付させていただきます。ただ、これらの業績を拝見するだけで、師に追いつくことは到底不可能なことと尻込みしてしまいます。今は偉大な師を失い虚無感を禁じえませんが、残された我々弟子達は筒井先生の教えを引き継いで前を向いて頑張るしかないと感じております。筒井先生が常に言われていた「やる前から諦めるな」という教えを思い出します。我々門下生は未熟者ですが、引き続きご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

 葬儀後、ふと見上げると台風一過の広島の空には美しい虹がかかっていました。それを見て、「8年前に他界された理恵子夫人にあの虹を伝って出会えたのだな」、と確信をしました。今頃は大好きだったワインをお二人で楽しまれていることと思います。
 筒井先生のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。

 最期になりましたが、皆様方におかれましては、このような新型コロナ禍の大変な時期ですが、ご自愛のほどお願い申し上げます。

                          合掌

筒井先生 研究業績リスト

2001年 筒井先生 動物学会賞受賞祝賀会にて

2015年 筒井先生 文部科学大臣賞受賞祝賀会にて

2018年3月23日 D3の鹿野健史朗さんが、博士の学位を授与され、さらに広島大学学生表彰を受賞しました!また、第2回浮穴杯・最優秀賞も受賞しました!

 2年前の益田さんに続き、浮穴研二人目の博士号取得者となりました。
 広島大学学生表彰は、各研究科から大学院生1名が選ばれ学記授与式にて学長から表彰されるものです。賞状には次の文言が記されていました。「あなたは 学術研究活動特に平成29年度に筆頭著者論文5報が国際学術雑誌に受理・掲載され 医学系の全国学会シンポジウムにおいても発表賞を受賞し その業績は誠に顕著であります」(ようするに論文沢山出したし、学会発表賞を受賞したので、表彰します、ということですね)

 学位授与式が終わったあとに、研究室で追いコンをしたのですが、その際に、第2回浮穴杯・最優秀賞を授与しました。こちらの賞状には「貴方は浮穴研究室において立派な研究をされました ここにその栄誉を称え表彰するとともに、賜杯に名を残し、永く成果を語り継ぎます」と記されています。何と第1回タイトルホルダーの同期の近藤君(コンチ)がわざわざ有給を取って駆けつけてくれました。3年ぶりの授与となりましたが、ニコイチ(二人で協力して1つのものを完成させた)という意味でも感慨深いものがありました(コンチ、3年前と同じセーター着てきてくれたんだね。外見は3年前と変わってなくて驚きでしたが、中身は社会人として立派になっていました)。


2017年8月11日 2006年9月以降PIとして研究を進めてきた本命の成果(ラットにおいて新規脳因子であるNPGLは、炭水化物摂取を促し体内での脂肪合成を高め肥満の開始を促す)に関する論文がeLife誌に掲載されました。

研究内容の概要は8月16日に発表されたプレスリリースをご覧ください。

論文タイトル:Neurosecretory protein GL stimulates food intake, de novo lipogenesis, and onset of obesity
著者:Eiko Iwakoshi-Ukena#, Kenshiro Shikano#, Kunihiro Kondo, Shusuke Taniuchi, Megumi Furumitsu, Yuta Ochi, Tsutomu Sasaki, Shiki Okamoto, George E. Bentley, Lance J. Kriegsfeld, Yasuhiko Minokoshi, Kazuyoshi Ukena(#コファーストオーサー)
出典:eLife 6:e28527 (2017)
DOI:10.7554/eLife.28527
(オープンアクセスジャーナルですので、誰でも自由にご覧いただけます。上記「eLife誌に掲載」かDOIの青文字部分をクリックすると論文のサイトに移行します。)

 ここでは、今回の論文受理に至るまでの道のりを記します。過去にも論文として公表してきた節目毎に本出来事欄にも論文発表までの経緯を残してきましたので、今回も記してみたいと思います。ただ、今回は10年以上費やした本命研究の集大成ですので、思い入れが強く、少々長くなると思いますので、お時間のある時にお付き合いください。

 指導教授であった筒井和義先生が2006年9月に早稲田大学へ転出され、新たな研究をスタートさせようと思いました。当時、助教授(現・准教授)に上げてもらったばかりで、年齢も30代半ばでしたので、完全独立PI(独立研究室主宰者)としては若輩者でした。学生もいなかったために、ある程度冒険できる研究をしようと考えました(今考えれば無謀な賭けでした)。決して流行りものでも他人の後追いでもなく、これまでの研究のバックグラウンドを活かしながらオリジナル研究を追求しようと意気込んでいました。一方で、研究室には実験機器・試薬類も殆どなく、期待と不安が交錯していたのを思い出します。そのような中で、出産直後の岩越さんと共に一から研究テーマの探索を行いました。色々やりました(正確には、やってもらいました)。円口類からの物取り、ホヤからの物取り、鳥類での浸透圧負荷をかけた際の脳内因子の探索、偶然できた抗体の未知抗原の探索などです。ホヤの仕事(Endocrinology誌に2008年掲載)以外は殆んど上手く行きませんで、「このままでは研究者としてはダメだ、将来が無い」と悲観していたところ、2007年にはほぼ一年間体調不良(心臓が何故か痛い。病院に行っても異常なし。自律神経失調症と思います。)が続き研究にはならず、ひたすら講義の準備ばかりする日々でした。そのような際に、両生研の住田正幸先生からお声を掛けていただき、カエルの皮膚からの抗菌ペプチドの探索研究で何とか研究室体制を確立する足掛かりとなりました(これは3報の論文としてまとめることができました。)。また、筒井研時代のやり残していたトリでの26RFaの仕事も2010年にEndocrinology誌にまとめることはできましたが、ホヤやトリの仕事は先代教授陣の遺産でしたので、オリジナル性のある研究ではなく、「昔の貯金で研究しているね」と、学会でも言われたことを思い出します。

 話は戻りますが、何か研究室の柱となる独自テーマを立ち上げるべく、暗中模索を続けていく中で、岩越さんの頑張りでサブトラクション法によりニワトリの視床下部からのペプチド性因子をコードした未知遺伝子を2008年7月に発見しました(雑感欄の「博士と助手の10年間」にフィクション調で経緯を記しています。)。とにかく、「昔のお釣りではない、新たな研究」を立ち上げたいと必死でした。ここからは病気らしい病気もせず、以前にも増して元気になりました。当時は新規物質を発見すれば、あっという間に機能解析も終わり、トップジャーナルへの投稿も夢ではないと簡単に思っていました。そうは問屋が卸さず、そもそも当初の「活性物質の構造予測」に関して1年近く間違った考えをしていました。万策尽き果てたころに我々の師匠の宗岡洋二郎先生に前駆体タンパク質配列を見ていただき、「我々の予想は違っていた」ことに気付きました。当時、宗岡先生はご退職から10年以上経っていたと思いますが、勘の鋭さにはただただ敬服するばかりでした。その後も、「合成物ができない、溶けない、活性が出ない、再現性が取れない」の連続で、4年以上ネガティブデータが続きました。免疫染色で神経細胞を染めることが出来たのが2012年初頭でした(それまでは偽遺伝子ではないかと怪しまれていました。免疫染色の結果を見て、私が「やっぱりペプチドとして存在していた!」と言ったのですが、研究室メンバーは「そう思わずに無理難題言って研究を続けていたの?」と驚いたとのことです。)。一方で「新規脳因子をコードする新規遺伝子の発見!」という何やら秘めた可能性に賛同・期待していただき、多くの研究費(科研費・若手A、生研センター、民間研究助成財団など)のご支援を賜りましたが、それらの期待をことごとく裏切り続けました。予備実験のために試行錯誤を繰り返したため、結果としては無駄に研究費を費やしたようにも思い、常に罪悪感で一杯でした。心の中では、「研究費は完成した成果へのご褒美ではなく、可能性への投資なのだから、頑張ってやって成果が出なければしょうがないよね。そもそも研究費が取れてすぐに成果が出る仕事なんて、申請書を書く段階から結果があったんじゃないの?」とひねくれてもいました(申し訳ありません)。何も成果が挙がらず、入室した学生達にも不完全燃焼の思いで研究室から社会へ送り出してきました。当時の思いは、「この振り子は悪い方、良い方のどちらで止まるのか?」といつも考えていました。もちろん、心の中では上手く行くことを願っていたのですが。ただただ、「自分達で見つけた脳因子の機能を自分達で見出したい」という執念で研究を続けました。

 2012年夏頃まで、結果の再現性が取れず、データが出るたびに解釈を変えて泥沼に入り込んでいました。もうそろそろ限界かなと感じていた2012年末に様子が一転しました。私の記録を見返してみると、「2012月12月29日 ついにパズルが解けたと感じた!点と点が繋がって線になったのではないか?」というのがあります。そうなのです。今回の発表成果である、「新規脳因子の生理作用が脂肪蓄積」であることに辿りついたのです。2013年はそれまでの4年半の停滞が嘘のようにデータが蓄積し続けました。何度も何度も再現性を取り、発見した効果が間違いないことを確認しました。さらに、それを裏付けるデータも取っていきました。我々は生物屋ですので、「基礎医学、内分泌代謝学」の知識が全くなかったのですが、科研・新学術(食欲脂肪蓄積制御)での4年間の班会議や内分泌代謝学サマーセミナー等での研究室員への派遣で「必ず押さえないといけない必要な基礎データ」が徐々に分かるようになってきました。その他にもお会いしたこともない大御所の先生に突然メールをしてご意見を伺うという失礼を何回かしました。ご意見を伺いに押しかけセミナーをお願いしたこともあります。加えて、生研センターの予算で導入できたマイクロウェーブ・ペプチド合成機や呼吸代謝解析装置など、特殊備品の使用無しにして研究の進展はあり得ませんでした。まさに、物心両面でのご支援を数多くいただきました。改めまして関係各位に御礼申し上げます。

 2014年3月には生研センターの研究支援が終了し、ポスドク2名も研究室を離れることが決まりました(次の職が決まってよかったです)。何とか、ノルマとしてニワトリでの成果を支援間際の3月にBBRC誌から公表しました。その後、ラットでの研究成果をトップジャーナルへ投稿するためには、最低限のデータがどうしても必要でしたが、何とか学生達の頑張りでデータが8月に得られました。7・8月は投稿用の図を作成し、論文構成をひたすら考え続けました。9月から論文を書き始めましたが、Reportとしての短い字数制限のため、意外なほどにあっという間に書き上げることができ、関係者にご意見を貰った後、10月上旬の投稿となりました。さてさて、ここからが第二の関門、「生みの苦しみ」でした。最初に投稿し始めたのが、2014年10月で、その後、延べ12雑誌目の投稿で漸く2017年7月に受理されました。この間、殆どがエディターリジェクトでした。リジェクト後、半年ほど追加実験をしてデータを出し、それを加えて投稿する、という作業を5クールほど繰り返しました。改稿と投稿を重ねるにしたがって、作用メカニズムのストーリーは分かりやすくなってきたように思いました。最初は霞がかかっていた状態が、次第に晴れ渡って視界良好になったように思います。また、第4クールの投稿後、2016年8月に国際科研の支援により渡米し、到着し下宿で初めて開いたメールがリジェクト通知メールでした。内容はレフリーの否定的なコメントのオンパレードだったのも今となっては良い思い出です。遺伝子ノックアウトのデータが無いことや受容体が不明なのは、難しいジャーナルとしては物足りないのが伝わってきました。あの時、「2017年9月に日本に帰国するまでに受理されるのだろうか?」と本当に不安に思っていたのが昨日のように思い出されます。ただ、最後のeLife誌は、最初の投稿でメジャーコメントが一つもなく、いきなりマイナーリバイスでの速攻受理(投稿から一月半)となり、拍子抜けするほどの予想外の嬉しい結果となりました。最後は、UC Berkeleyでのメンター達の論文修正へのサポートが活かされました。この辺りは、ネイティブにしかわからない、微妙なニュアンスがあったのだと思います。

 NPGL遺伝子発見が2008年7月でしたので、公表するまでに丸9年かかりました。新規ペプチド性因子をコードする新規遺伝子の探索研究を開始してから10年以上かかっていることになります。上記の機能発見の足掛かりが得られた2012年末から数えても約4年半かかっています。これが長いのか短いかと言われれば、当然前者でしょうが、色々なことを学べることが出来た年月だったと思います(難しいジャーナルには5年以上かかるのは当たり前とか、今回の論文受理でも「よく粘ったね」と周りの先生方からは言っていただきました)。何よりも常に期待と不安が交錯する中で、毎日がドキドキする研究展開でした(同じドキドキでも2007年とは大違いでした)。独立した2006年よりも成長したのではないかと思います(加齢したのは確か)。この間、2008・2009年頃はまだこの研究に着手していることを隠していましたが、さすがに学生達にも学会発表させる必要があり、2010年からは学会発表を行ってきました。当初は配列を隠していたために、「学会発表で配列を出さないと議論にならない」「いつ配列出すのだ」と色々とお叱りを受けました。また、「新規脳内因子の発見」という物珍しさから、これまで学会発表賞を13件いただくことが出来ました。それに対しても、「かなり以前から新規と言い続けているが、いつ論文になるのだ」「たくさん研究費もらっているのに成果が出ていない」と直接・間接、色々と耳の痛いご批判を頂戴しました。そのような折には、いつも「PI(独立研究室主宰者)の責任」と痛感し、しばらくは落ち込んだものでした。心の中では、「もう少しだけ時間をください。機能が怪しい時点では論文にしたくないのです。これだけ大きな仕事に巡り合うチャンスは今後来ないと思いますので」と叫んでいました。不思議なもので、最初に報告すべき内容であった本eLife誌の成果は、2014年BBRCでの速報、ペプチド産出・合成法の論文3報、ニワトリでの脳室内慢性投与(GCE誌)、マウスの摂食行動促進作用(Endocrinology誌)とシリーズ7報目の論文となりました。小さな研究の積み重ねが大事ということも学びました。マウスの論文(Endocrinology誌)に関しては、今回のラットの本命データに影響を与えない基礎データのみでしたが、こちらも投稿後2ヶ月以内で受理され、代謝の特集号に掲載されました。食欲に関わる新しい脳因子ということもあり、国内外の多くのメディア(20サイト以上)で取り上げていただいたのも、今回のラットのデータの論文受理にプラスに作用したのかもしれないです。

 以上の通り10年間の本命の仕事が漸く長い時間と多くの研究費を費やして論文として形になりましたが、これがゴールではありません。一区切りついたことは間違いないですが、これからが本当の競争です。さらに論文10報程度にまとめられる基礎データは集まってきていますので、それらを一つずつ形にするべく、日々精進する所存です。ここまで来たら私の仕事も論文書くことくらいになりました(もちろん研究費を稼いでくるのも大事ですが)。

 また、幸いなことにeLife誌はオープンアクセスジャーナルですので、論文を読んでいただき、「こんな実験行ったら新しいことが分かるよ」「うちの技術使って共同研究する?」と仰っていただける方がおられましたら、共同研究をさせていただきますよう、お願い申し上げます。これまで、「とにかく最初の本命論文までは研究室内の技術のみで」という意固地になっていたこともあり、逆に時間がかかってしまいました。これからは積極的に研究ネットワークの幅を広げていこうと考えております。

 最後に、これまでご指導・ご協力いただいた皆様のお名前を記して、謝辞に代えさせて頂きます。引き続き、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。

ご指導いただいた先生方

広島大学関係者
  • 宗岡洋二郎先生:広島大学名誉教授、岩越・浮穴の総本山である指導教員(個人的には仲人)、ずっと要の際に助けていただいています。
  • 筒井和義先生:現・早稲田大、広島大学名誉教授、博士課程から助手時代までの指導教員、筒井先生無しでは今の浮穴研はありません。
  • 松島 治先生:元・広島大、卒論から修士まで3年間の指導教員、研究のイロハを教えていただきました。
  • 斎藤祐見子先生:色々な基礎的な実験からご指導いただき、また共同研究をお願いしてきました。
  • 古川康雄先生:常に色々なアドバイスを頂きました。学生指導等、本当に色々と救っていただきました。
  • 佐藤明子先生:ちょうど我々のデータが出だした時期に広島大に着任され、隣のラボから進展を見続けてくださいました。最近では共焦点顕微鏡もお借りし、観察をさせていただいています。
  • 森下文浩先生:マスターコースまで所属した講座の先輩であり、いつも温かいアドバイスを頂いています。
  • 山本 卓先生・佐久間哲史先生:ゲノム編集で多大なご協力を頂いています。
  • 都築政起先生:生研センターのヒアリングの際には色々とご助言を頂きました。
学外関係者
  • 橘 哲也先生:愛媛大、ニワトリ研究での共同研究者、本当に色々な実験で手伝っていただきました。
  • 坂本浩隆先生・坂本竜哉先生:岡山大、浩隆先生は筒井研の同門、電顕解析の共同研究をお願いしました。結果については、別論文にてまとめたいと考えています。
  • 海谷啓之先生:国循研究センター、物取り屋のライバルとしていつも刺激を受けています。
  • 井田隆徳先生:宮崎大、受容体探索で共同研究を進めていただきました。今のところ見つかっていないです。
  • 村上 昇先生:宮崎大、生研センターの評価委員として色々とご指導を頂きました。
  • 伊達 紫先生:宮崎大、科研・新学術の班会議等で色々とご助言を頂きました。
  • 秋枝さやか先生:宮崎大、ペプチドホルモン研究会や宮崎押しかけセミナー等、色々と技術的なご指導を頂きました。
  • 小林哲也先生:埼玉大、脳下垂体ホルモン関係でご助言をいただきました。
  • 宮里幹也先生:国循研究センター、科研・新学術の班会議等で色々とご助言を頂きました。
  • ペプチドホルモン研究会メンバー:矢澤隆志先生、根本崇宏先生、佐藤貴弘先生、森 健二先生、吉田守克先生、宮澤 崇先生、梶谷 宇先生、関口俊男先生ら。いつも良い刺激を受けています。
  • その他:学会・シンポジウムでアドバイスを頂いた先生・学生の方々
研究室内の研究協力者
  • 田中幸恵さん:2006・7年研究補助員、サブトラクション法で新規遺伝子を探すデータ解析をやっていただきました。その中に、今回のNPGLが含まれていました。
  • 大山晴香さん:2011・12年研究補助員(博士)、有機化学のプロとしてペプチド合成では色々と試行錯誤していただきました。その後、益田さんがペプチド合成を完成させました。
  • 大口悦宏君:2009~2011年在籍、今の行動実験の礎を築きました。
  • 益田恵子さん:2010~2015年在籍、NPGL合成法を確立し、浮穴研初の学位取得者となりました(詳細は本出来事欄にも記事有り)。ペプチド合成の量産が研究の進展を加速させました。
  • 別所裕紀さん:2012~2014年在籍、鹿野君・近藤君世代トリオの一人。脂肪組織での遺伝子発現解析、形態解析を行ってくれました。
  • 前嶋 翔さん:2012・2013年在籍、元ポスドク(2年)、現埼玉大学ポスドク。形態解析やサンプリングを進めてくれました。
  • 松浦大智君:2014~2016年在籍、形態解析やサンプリングを手伝ってもらいました。本人の研究はマウスでの解析(Endocrinology誌掲載)。
  • 加藤正暉君:2014~2016年在籍、形態解析やサンプリングを手伝ってもらいました。本人の研究はニワトリでの解析(GCE誌掲載)。
  • 齋藤鷹也君:2015年~在籍中、現M1。サンプリングを手伝ってもらいました。本人の研究はマウスでの解析(Endocrinology誌掲載)。
  • その他、研究室のOG・OBの方々に感謝申し上げます。ネガ・ポジ両方の財産が今回の成果に繋がったものと思います。

最後に、論文オーサー(論文掲載順、岩越・鹿野 コファーストオーサー)の紹介

  • 岩越栄子さん:2005年~在籍中、NPGL遺伝子の発見者、あらゆる実験に関与、その実験技法の正確さ・素早さはピカイチです。また、突拍子もない発想が結果的にはその通りだったりするのは天性のもの?
  • 鹿野健史朗君:2012年~在籍中、現D3、学振DC1、動物関連や血液成分の解析等、要の実験で頑張ってくれました。今の浮穴研の屋台骨をしょってくれています。本研究内容が学位審査の主論文の一つとなります。
  • 近藤邦裕君:2012~2014年在籍、鹿野君とニコイチセット。彼の食嗜好性への興味で研究が前進しました。
  • 谷内秀輔さん:2011~2013年在籍、元ポスドク(2年半)、現徳島大学ポスドク、過剰発現等の技術を立ち上げてくれました。
  • 古満芽久美さん:2009年~在籍中、大口君と同学年の卒論生であり、卒業後もずっと研究補助員としてサポートしてもらっています。古満さんの機転で何度危機を脱したかと思うと、敬服するばかりです。
  • 越智祐太君:2015年~在籍中、現M2、インスリン応答や脂肪酸測定など、最後の要のデータを出してくれました。
  • 佐々木努先生:群馬大、元々は岩越さんが生理研研究会や内分泌代謝学サマーセミナーで知り合いになり、色々とご助言をいただくようになったのがきっかけです。本研究の組み立て、データの確認、考察、論文執筆等で大変お世話になりました。
  • 岡本士毅先生:元・生理研、現・琉球大、科研・新学術や内藤コンファレンスで知り合いになりました。内分泌代謝学の同世代の専門家としていつも教えていただいています。本研究の組み立て、データの確認、考察、論文執筆等で大変お世話になりました。
  • George E. Bentley博士:UC Berkeley、岩越さんのメンター、論文組み立て・考察、論文執筆等では大変お世話になりました。
  • Lance J. Kriegsfeld博士:UC Berkeley、浮穴のメンター、論文組み立て・考察、論文執筆等では大変お世話になりました。
  • 箕越靖彦先生:生理研、科研・新学術でのご指導以来、本研究の組み立て、データの確認、考察、論文執筆等で大変お世話になりました。
  • 浮穴和義:研究総括者、学生達の自主性を重んじると本人は思っていますが、無言のプレッシャーも数多くあったことでしょう。皆投げ出さずに付いて来てくれて感謝です。研究室の皆、よく働いてくれました。学生達からは自虐コメントが「やり辛い!?」と思われています。

2016年12月10日 浮穴が平成28年度日本比較内分泌学会奨励賞を受賞しました。

 ホームグラウンドの学会で奨励賞をいただくことができました。この賞は、比較内分泌学の父である小林英司先生を記念して昨年度に小林賞が設立された際の若手部門(当時の規定では45歳以下)として位置づけられています。今年度の小林賞の受賞は、恩師である筒井先生が受賞され、師弟でのダブル受賞となりました。筒井先生をはじめ、これまでご指導いただいた先生方、共同研究者の皆様、そして浮穴研の卒業生・学生達にこの場をお借りして感謝申し上げます。まだまだ成果としては不十分と感じておりますので、文字通りこの受賞を励みとして、今後とも精進していきたいと思います。引き続き、ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。


広島大学大学院統合生命科学研究科
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浮穴研究室

〒739-8521 東広島市鏡山1-7-1

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([at]を@に変換してお送りください)

Tel. 082-424-6571(直通)

Fax. 082-424-0758(事務室)

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