温泉ガエル(リュウキュウカジカガエル)の長大なミトコンゲノムを迅速かつ正確に決定することに成功
大学院生(M2)の浅枝優花さんを筆頭著者とする、Nanoporeシークエンサーを使って温泉ガエル(リュウキュウカジカガエル、Buergeria japonica)の長大なミトコンゲノムを迅速かつ正確に決定した論文がPLoS One誌に掲載されました。この論文では、200回以上も同じ配列を繰り返すリピート領域を含む約2万3千塩基対のミトコンドリアの環状ゲノムをNanopore社製のシークエンサーのロングリード技術を活かして迅速に決定することに成功しました。
Asaeda Y, Shiraga K, Suzuki M, Sambongi Y, Ogino H, *Igawa T, Rapid and collective determination of the complete “hot-spring frog” mitochondrial genome containing long repeat regions using Nanopore sequencing. PLoS One 18: e0280090 October 2023 [ DOI | http | PDF ] (preprint@bioRxiv)
ショートリードシークエンサーによる大規模データが簡単に手に入る今では、ミトコンドリアゲノムなど簡単に決定できると思われがちですが、本論文では数千倍のショートリードデータを用いてもリピート領域はミスアセンブリになることを証明しています。実は無尾両生類のミトコンドリアゲノムは調節領域にこうしたリピート領域を含むことが多く、すでにショートリードデータのみを使ってアセンブルされたものの中には、実際の配列から重要なエレメントが抜け落ちたものが登録されている可能性があります。
また、温泉ガエルの高温適応の謎として、エネルギー代謝、特に高水温中での有酸素代謝がどのようになっているのかよくわかっていません。有酸素代謝の中心であるミトコンドリアでの遺伝子発現がどのように調節されているのか、今回得られたデータは謎に迫る第一歩としての大きな成果です。