リュウキュウカジカガエルの分布拡大に伴う高温耐性向上を実証しました。
大学院生のBagusくんとと取り組んできたリュウキュウカジカガエルの高温耐性比較の研究によって、漂流分散による分布拡大に伴って、高温耐性が獲得されたことを実験的に証明しました。
リュウキュウカジカガエルはトカラ列島に唯一生息する両生類で、顕著な高温耐性を有しています。特に分布の最北端である口之島では天然温泉(セランマ温泉)にまで生息しています。トカラ列島はすべての島が水資源の限られた小さな海洋島であり、分布拡大の際には炎天下に晒される水たまりなどを利用して生き延びてきたと考えられます。そのため、口之島の温泉集団に代表されるように、トカラ列島の集団では高温耐性能が向上していることが考えられていましたが、これまで温度耐性の比較は行われていませんでした。また、変態までの長期間の温度耐性についても調べられていませんでした。
そこで、西表島(ヤエヤマカジカかガエル)、沖縄島、奄美大島、口之島の個体群の幼体が変態までの長期間を検証し、さらに、変態までの温度嗜好性の変化も調べました。その結果、口之島の集団は他の島の集団に比べて高温耐性が向上しており、最高で常時35℃の温度下で飼育しても正常に変態できることが分かりました。この温度では他の集団はほとんど変態まで至らないあるいは、変態しても幼体時期に正常に生育できませんでした。したがって、リュウキュウカジカガエルはトカラ列島への飛び石状の分布拡大に伴って、高温耐性能が向上しており、これによって温泉という極限環境にまで生息が可能になったことが明らかになりました。
Priambodo B, Shiraga K, Harada I, Ogino H, *Igawa T, Long-term heat tolerance and accelerated metamorphosis: Hot spring adaptations of Buergeria japonica. Zoological Science (in press). [ DOI I http I PDF ]