プロトコル

[breeding]ツメガエル用掛け流し水槽の作成方法

 ツメガエルを利用した研究を進めるためには、個体を健全な状態で飼育維持しておく必要があります。ツメガエルは両生類ですが、魚類と同様に生活史を通じて水中生活を送るため水槽での飼育が可能です。最も原始的な方法は手作業での水替えを行うことですが、循環式あるいは掛け流し式の水槽システムを用いることでより簡便に飼育することができます。
完成したシステムは業者から入手可能ですが、ここではホームセンターなどで入手可能な部材で水槽システムを自作する方法を紹介します。

工具・材料

 材料の多くはホームセンターあるいは、ネット通販で手に入れることができます。ただし、研究者自身がホームセンターなどに出向いて一度に購入するのは大変なので、ネット通販の利用をお勧めします。私は公費払いが可能なネット通販、モノタロウを利用しました。

工具

  • 電動ドリル・ホールソー(外径22mm):貯水タンクの穴あけ(二ヶ所)のみに必要なのでレンタルができればベスト。
  • モンキーレンチ
  • ノコギリ:コンパネの端材を加工するのに使用。

材料のリスト


装置の組立

1. メタルラックを組み上げる。

 ドウシシャ製ルミナスホームラックを組み上げます。幅91.5×奥行35.5×156.5cm、5段のものに加えて、高さを延ばすためにオプションの延長用ポールを追加しています。
 各棚の間隔はポールの目盛で12目盛(約27 cm)とします。以下の順番でスリーブを設置して棚をポールに固定します(スリーブは二つの目盛にまたがって取り付けるようになっています)。
①一番下の目盛(貯水タンクとポンプを設置する棚)。
②一番上の目盛から数えて37、38番目の目盛(下段の水槽棚)。
③一番上の目盛から数えて25、26番目の目盛(中段の水槽棚)。
④一番上の目盛から数えて13、14番目の目盛(上段の水槽棚)。
⑤一番上の目盛から数えて1、2番目の目盛(天板)。


2. コンパネを購入し、カットする。

 水槽の設置と排水を兼ねるコンパネ板(普通合板 厚さ12 mm、JAS規格品、あるいはそれに準ずるもの)を購入し、適切なサイズにカットします。カットはノコギリ等を使っても可能ですが、大変なので購入したホームセンターに依頼した方が良いです。カットのサイズは下記図面になります(図面のPDF)。

3.プラスチック板を切断し、コンパネに接着する。

コンパネを水槽台として利用するために、プラスチック板を適切な大きさに切り取り、コンパネにスプレー糊と両面テープで接着します。隙間にはシリコンコーキング剤を充填します。
 プラスチック板(アクリルサンデーPPクラフトシート厚さ0.75mm、565 mm×980 mm)の切断サイズは下記の図面になります(図面のPDF)。これを3段分用意します。
 残りの1枚は底板の部分に張りつけるため、底板のサイズ(342mm×835mm)にカットします。

大学近くのホームセンターでは1,480円/枚で販売。JASコンパネでなくとも良い。

 PPクラフトシートはコンパネ板を物差し替わりにしてカッターである程度切り込みを入れ、折り曲げてカッターの刃を入れると綺麗に切れます。
切ったシートのうち大判のもの(410mm×835mm)はスプレーのりをまんべんなく塗布したコンパネに張りつけます。残りのシートはコンパネの側面に両面テープで張りつけます。
 部材を張りつけた後、シートの隙間にコーキング剤を充填します。

(早稲田大にて作業中の様子 写真は加藤先生@早大ご提供)

3. 塩ビパイプの切断

 水を給水、循環するための塩ビパイプ(呼び径 16mm)を以下のサイズに切断します。

長さ個数用途
A42 mm18給水口の接続
B30 mm15給水口の接続(棚間パイプへの接続)
C293 mm2棚間の給水口の接続
D112 mm2給水からの戻り配管
E75 mm1給水からの戻り配管
F750 mm1給水からの戻り配管
G765 mm1給水からの戻り配管
給水部分の部品(A)および(B)の位置
給水部分の組立後(同じものを3つ作ります)
(早稲田大に設置したもの 写真は加藤先生@早大ご提供)
長さ個数用途
H30 mm5ポンプ、タンク、殺菌灯の接続。
I150 mm4ポンプから殺菌灯、外部への給水口。
長さ個数用途
J80 mm1フィルターから貯水タンクへの給水
K730 mm1フィルターから貯水タンクへの給水
L80 mm1給水からの戻り配管
M500 mm1給水からの戻り配管

4. 雨どい(排水溝)の切断

 各棚の排水は市販の雨どいを利用します。それぞれの棚に合うように下記のサイズでといを切断します。

長さ個数用途
915 mm3各棚に取り付ける横とい。
30 mm3集水といととい止まりとの接続用。

5. 塩ビパイプ・雨どいの接着

組み上げながら接続するパイプを除いて、個別に接続できる配管(各棚の給水口など)はあらかじめ完成させておきます。
 切断後の塩ビパイプはリーマーで端を処理し、25~30 mmほど接着剤(写真)をしっかり塗布して30秒間押し続けて接着させます。接着が不十分だと後から漏水するのでしっかりと固定します。雨といも同様に専用の接着剤で接着します。
 給水口のコックは防水シールテープを巻いてから塩ビ継手にねじ込みます。

(写真:加藤先生@早大ご提供)

6. 部品の組み上げ

・給水口を各棚に設置する。
 あらかじめ組み上げた給水口の配管を各棚の上の段に取りつけます。各棚に傾斜をつけるためにコンパネの端材を 置くので、その板に対して下からブラケットを取りつけ、木ねじを打ち込みます。

フィルターハウジングの取り付け
 最下段の棚下にフィルターハウジングを取りつけます。二つのフィルターハウジングは樹脂製の継手(PCニップル)で接続しておきます。パイプサドルと呼ばれるパイプ固定用の部材をメタルラックの網の方向に対して垂直に置き、上からネジ(トラス頭タッピングネジ・M5×16)で貫いてハウジングを固定します。ハウジングの位置は次の手順の貯水タンクとの接続を考えて調節します。
 水道蛇口からフィルター側へは、フィルターハウジングに付属しているホースニップルを取りつけ、フィルターから貯水タンク側への出水側には塩ビ継手を取りつけます。

・棚間パイプの接合
 それぞれの棚間での給排水をする縦に走る配管を組み上げます。排水側の上部にコックを取り付けて、給排水圧を調整できるようにしています。(写真は二段仕様ですが、三段仕様でも同様に取りつけます)

・貯水タンク・ポンプ部の組立
 貯水タンクとなる衣装ケースには、①ポンプの取水口、②フィルターからの給水口として、穴をあける必要があります。パイプを組み上げた上でおおよその位置を決め、ホールソーで直径22 mmの穴をあけます。
 ポンプからの出水口は塩ビの継手とソケットで挟み込み、フィルターからの給水側は、エルボの水栓用ソケットとボールタップで挟み込みます。どちらもパッキンを間に入れます。

[breeding]ツメガエル用掛け流し水槽の作成方法」への2件のフィードバック

    • 今度の東京出張の際に立ち寄って完成後の水槽の状況を見たいと思っています。
      他にも水槽作製の機会はありそうなのでバージョンアップ版も紹介できれば。

      返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です