5.アホイ |
1)アホイでのツーリズム(ジョセリン氏)
アホイはパナイ島の北東部に位置する地区である。人口は増加傾向にあり,2000年には45,192名であったものが2005年には44,500名となっている。主力産業のひとつに漁業がある。以前は誰でも漁業操業をすることが出来たが,トロール漁業や網目の細かい漁網を用いた操業,ダイナマイトや毒などの不法行為などのためサンゴ礁の破壊や資源の悪化が進んだ4)。そのため,今年から漁業操業に関する規則が制定された,また,2.5万ヘクタールある海域の約10%をMPA,MPA外側の海域をバッファゾーンとすることも構想されるようになった(現在のMPAは500ヘクタール程度)。
2)アホイでのツーリズム(ジョセリン氏)
AjuyではLGSP(Local Government Support Program)によって観光事業を展開している。観光客の受け入れは2004年4月から開始した。ツーリズムの場として,アホイの沖合にある3つの島が主に利用されている。これまでの訪問客数は93名である。
マニシパルのTourism Officeが観光事業の企画,PR活動などを手がけている。自治体が観光事業に関する企画・立案し,それに住民を巻き込みながら実施するという体制にある。パナイ島北部にあるボラカイは観光開発が非常に進んでいるものの,その開発主体は海外資本である。アホイではコミュニティー参加型の観光開発を目指している。
観光事業に関与する住民への教育もTourism Officeが担当している。観光客への教育も重要視しており,周辺海域に設定されるMPAの意義やその周辺海域でツーリズム活動する際の注意点などを伝えている。
なお,アホイの北部に位置するコンセプシオンでも同様の取り組みを行っており,アライアンスを結んで観光客の融通などを行っている。
(1)Galavazas Island
Galacazas島では,遺跡ツアー,セラピーなどが行われている。この島では産業が未発達であるため,セラピーのようなマッサージを実施して住民の雇用機会確保を目指している。また,1998年に復元された18世紀時代の遺跡があり,遺跡ツアーを実施している。この他に,島名に関する昔話などの話題提供を行っている。
(2)Marbuena Island
Marbuena島は個人所有の島であり宿泊施設がある。この島をツーリズムの場として利用している。ウオーキング(30分から40分),バードウオッチング(サンクチュアリとなっている),スイミングなどが行わている。
(3)Nasidman Island
Nasidman島はAjuyから10分くらいの海域にある島である。かつて海の要所であり,周辺海域で操業する漁業者が宿泊する島でもあった。現在,88世帯500名の住民がおり,保健所なども整備されている。主な産業は漁業であり,住民の大半が漁業収入によって生計を立てている。周辺海域にはMPAなども設置されている。
ツーリズムでは,漁業者の伝統的な食事の体験,漁業の体験,漁村の体験などが行われている。また,観光船もあり釣りを楽しむことも可能である。
3)その他
(1)コンセプシオンの石炭発電について
当地区は電力事情が悪くたびたび停電が発生する。パナイ島の北東部には石炭鉱山があり,石炭発電所の建設が計画されている。ただ,環境悪化を招くという指摘があり,環境に優しい発電方法をめぐって議論が繰り返されたが何の前進も見られなかった。こうしたことからコンセプシオンに石炭発電所を建設する予定になっている。
(2)ボラカイについて
ボラカイはフィリピンにおける一大観光地のひとつである。ただ,かつては電力もない地域であった。20年ほど前,ドイツ人がエコツーリズムでホームステイをしたことをきっかけにドイツ人とドイツ資本による開発が進んだ。観光客はドイツ人を中心とした欧米人が中心である。
(3)海外資本とのパートナーシップ
@ AIRS:family planning
人口増加が著しいため,若い漁業者に対してAIRSへ参加するように伝えている。
A MSH
健康に関するプロジェクト。ファミリープランニング,ビタミン,HIVなどに関する活動が行われている。
B HER
Health Equality Reform。データの収集と作成,インディケータ,予算のプランニング。
C FORD
教育プログラム。この地域の教育水準は50位中47〜48位であったが,今は36位となった。
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プレゼンテーションの様子
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アホイのMayor
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1) 2003年ギマラスprovince作成のビデオより。なお,貧困率については2000年の値。
2) 1ペソ=2.4円で換算
3) ただし,Iloilo Cityやネグロス島からビーチへ直接アクセスするケースもあり,こうした観光客数はカウントされていない。
4) アホイの沖合海域で違法行為を行う漁業者は,かつてコンセプシオン方面から来ていた。現在はコンセプシオンから違法行為に訪れる漁業者は少数派であり,大半はネグロス島方面からである。アホイには警官が18名しかおらず,取り締まりなど十分な対応が出来ていない。さらに違反者も監視の様子を携帯電話で伝え合っており,摘発は難しくなりつつある。
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