4−2.学術論文の執筆指導:添削と助言

(1) 重要性と方針


 1) 重要性 執筆能力の向上。
 【参考図書】
  ・科学者として生き残る方法(F. ロージ・T. ジョンストン)
   (科学とライティング:総論、246-253ページ、査読のある発表、253-256ページ)
 2) 直してこない人対策
  @現象 論文原稿・セメスターレポートにコメントしても議論することもなくコメントを直してこない学生さんがいる。
  A行動方針 以下のことを言う。
 指導する側の人も時間のムダWaste of Time)だと思うからコメントしなくなります。
 あなたは論文執筆能力を改善する機会を失うことになります。
 これはコメントを無視する(Ignore)と言うあなたの選択が生んだことです。私は残念です。
 質の低いセメスターレポートにはその旨の採点をします。
 学術論文の場合は、掲載拒否になる可能性が上がります。
 3) コメントの記入
  @査読コメント形式 査読者からのコメントへの対応に慣れるため。
  AWord ファイル Word ファイルに校閲内の「変更履歴の記録(Track changes)」、「コメントの挿入」機能を使って記入されたもの。
 ・複数の人が文章を校正するときに有用。
 ・メール送信できる。
 ・どこが修正されたのかが分かりやすい(明確にできる)。
 ・早く処理できる。
  B印刷原稿 印刷した原稿に手書きで記入したもの

(2) 全体


 1) 内容
  @追加・削除 足りない部分を追加する(文献、データなど)。
過剰な部分を削る。
  A間違い 間違いを直す。
概念
  B引用文献 手法
You need references for x.
 2) 文章 Sentence polishing
  @短く 長い文章は二つに分ける。Break up sentences into segments if it is long.
 (関係代名詞の多い文章など)
出来れば25単語くらいに収める。
  A明瞭さ 二意的であれば一意的にする。
重複を避ける。
文のつながり。接続詞のチェック。
  B文の接続 Then。As a result。Furthermore。However。
 導入。In this study。
 例(Example)。For example。
 原因(Cause)。Therefore。Thus。Consequently。Thereby。
冗長な部分を出来るだけシンプルにする。
Shorter is better. Use “respectively”.
  C論拠の示し方 第一に(まず)、第二に、第三に。
一方で。
  D能動態 能動態(Active Voice)。
  E強調 Ideal。Particularly。Unexpectedly,。
 3) 図表
図・表の取捨選択。順序。分かりやすさ。
明瞭に分かりやすくする。
 図と注釈を見ただけで内容が分かるようにしておく。
 比較するデータの違いが分かるようにする。
 単純化する(複雑にしない)。
 図の中に小さな図を入れない。 
  @本文
   引用する You should refer the figures in the text.
   引用の仕方 短めの学術論文では(Fig. 1)のように引用する。
  A線・シンボル・配色 白黒印刷しても分かるようにする。
  色使い
  線・シンボルの種類を変える。
I have difficulty in recognizing the "A". Contrast between the "A" and the background is too weak.
Please write the "A" in black in this case (on light gray background).
  B基本 レベル上げ2へ移動。
エラーバーを付ける。
生データに戻れるようにしておく。
 4) 科学
  @誤差 レベル上げ2へ移動。
  A単位
   温度 It is not good to use both “K” and “°C” in the same manuscript. Recently “K” is preferable.
   重さと力 ton, tonf, MN
   VとeV kV、keV
   含水量 This is because some people confuse “H/106 Si” with “wt ppm H2O”. Both are “ppm”.
 5) その他
  @短縮形 Use a full name when using it for the first time in a paper before its abbreviation.
  慣習 Convention, By a convention of
  空間群 By a convention of crystallography, the space group is written with italic letters (e.g. Pbnm).
There is a confusion in literature in terms of the space groups of olivine among Pbnm and Pnma.
  スペース You normally need one “space” between numbers and units.
  
 6) 文法
  Grammatical Error
主語・述語。
修飾、被修飾。
名詞(noun)
自動詞と他動詞
時制
形容詞(Adjective)
  @鉱物名 文章中の鉱物名小文字(Small Letter, Lower-Case Letter)から始める。
Mineral names should start from small letters in sentences.
  A単数形・複数形 主語−述語の数の一致
Subject-Verb agreementin number
単数(singular number)
複数(plural number)
axes
Spectrum、Spectra
   Each The “A” should be singular form after “each”. Please double-check this in the English textbook.
  B固有名詞
   (proper noun)
地名。天体(惑星)。
固有名詞のThe。
「San Carlos」は市の名前なので、「St. Carlos」ではない。
   惑星 惑星は大文字(Capital Letter, Upper-Case Letter)で始める(Capitalize)。
Earth(他の惑星と対比する場合)
Use “Earth” for comparison with the other planets (e.g. Mars).
   ハイフン ハイフンでつなぐこと(hyphenation)
 ハイフン(hyphen)
“single-crystal”, “cross-section”, “high pressure”
You do not need the hyphen for nouns (single crystal).
You need the hyphen for adjectives (high-pressure research).
可算名詞・不可算名詞(countable nouns vs. uncountable nouns)
“outer diameters” and so on.
You need “a” before these words because these words becomes countable with numbers
(e.g. an outer diameter of 1.6 mm).
“by” vs. “with” (because you used a machine)
 確率 may:50 %、probably:80 %、perhaps:<20 %
A period (dot) should be put after a parenthesis.
 7) 綴りの間違い
  @スペルミス Spelling mistake
  Aタイプミス Typographic error
   鉱物名 Pyrophyllite, Talc
 8) 英語 Thus, そういう訳で
For this reason そのため
This study, the present study, 本研究(混同しそうなときは、the present study)
In another work
Ideal, sufficient, potential
Detailed, Intrinsic
We note that -.

(3) 手法/ Method


 1) 書き始めの
   タイミング
実験・分析をほぼ一通り経験したら、宿題を出す。
 2) ポイント
  @再現可能性 論文中の記述に従って再現できるか。
 【参考図書】
  ・理系のための研究生活ガイド第2版(坪田一男)
   (追試しやすい形で書く、147-148ページ)
   (こまかな配慮を明示する、148-149ページ)
  A確からしさ 測定点数。標準偏差。
  B時制 やったことは過去形。
 3) 心構え 自分でも実験・データ解析をやってみる。
 4) 内容
  @試料
   天然試料 産地。
   合成試料 合成方法。マルチアンビル装置。
   結晶方位出し 単結晶X線回折法。
   記載 大きさ。包有物。クラック。双晶。
  A実験方法
  B分析方法
   硬度 硬度計。試料の固定法。試料の表面状態。試料の厚さ。圧子の種類。荷重。計測時間。
   組織 光学顕微鏡(偏光顕微鏡)。光の種類。反射光。透過光。偏光。
SEM。TEM。
   含水量 赤外吸収法。
  C解析方法
 5) 図表
  @試料 全体を写した光学顕微鏡写真。
含水量(IR)
  A実験方法 実験手法の説明
セルアセンブリー、6-6アセンブリー、アンビル
断面図、立体図、図面、写真
  較正曲線 圧力較正曲線(圧力-プレス荷重)
温度較正曲線(温度-電力)
OEL/TEL. Follow common definition.

(4) 結果/ Results


 1) 書き始めの
   タイミング
「手法」が終わったら、宿題を出す。
 2) 実験の表 You should arrange the runs with meaningful order (not as you did the experiments).
 3) 図 図で内容が分かるようにする。
 圧力較正 電気抵抗-プレス荷重。
圧力較正曲線(新規性がある場合)。
 実験条件 P-T
 回収試料の全体像 光学顕微鏡像、BEI
【単結晶試料の場合】
Show the crystallographic axes in (b) and (c). This is important information for the readers. 
   硬度 クラック。
   微細組織 粒径・粒界組織(BEI、SEI)
転位(BEI(酸化修飾法)、TEM)
Add “White lines and dots are dislocations.” This is important information for the readers.
変形アンビル変位-時間。
相同定
 ラマン、X線回折パターン
X線回折パターン。X線透過像。
応力-歪曲線。
極点図。
相関図。
 応力-温度(アレニウスプロット)。応力-圧力。
 応力-温度-圧力。
【参考図書】
 ・理系のための研究生活ガイド第2版グラフ図表を使いこなす、149-150ページ、坪田一男)
 4) 文章 図表を説明する。

(5) 議論/ Discussion


 1) 書き始めの
   タイミング
「結果」が終わったら、宿題を出す。
 2) チェックポイント
  @主張の一貫性 一貫してる?(整合性)
  A議論 はじめにで書いた目的に応えている?
 3) 有用性 高圧鉱物の物性測定に適している。
 4) データの検証 影響を与えそうな要素。
 5) 過去の結果との比較 過去の結果との比較の図
 温度-圧力。硬さ-剛性率。
過去の結果との比較の表
 パラメータ。
同じ鉱物
違う鉱物
 図表 指数
 地震波速度異方性の指数-歪
【参考図書】
 ・理系のための研究生活ガイド第2版(discussionは意義づけ応用をあげる、150-151ページ、坪田一男)

(6) はじめに/ Introduction


 1) 書き始めの
   タイミング
「議論」が終わったら、宿題を出す。
それまでの研究指導で議論や論文紹介をしているのである程度大丈夫。
コメントを通して議論し、内容を補完する。
 2) 標準論理構成
  @一段落目
 重要性
 Importance
 Necessity
共通認識(Common Knowledge)→本研究の必要性
共通認識が間違っていないか?
本研究に関連した論文が取り上げられているか?
教科書や総説を引用しているか?
  A二段落目
 過去の研究
既知の知見の紹介(Short Review)
 →過去の研究の足りないところ(技術的な限界、Limitation)
 →作業仮説(working hypothesis)・疑問(question)
  B三段落目
 新規性
本論文の新規性・作業仮説
  着目点→過去にはない(no study)
  C四段落目
   流れ 本論文の目的・狙い(purpose, aim)→したこと→報告します
 ・不明瞭であればはっきりさせる。絞れていなければ一つに絞る。
 ・他の論文との関係が分かりやすい?
   目的 To determine A, ….
   したこと
   報告します
 キーワード It’s important to show the related words at the beginning of the paper.
 引用文献 It’s important to add a text book or a review paper as reference(s) at the end of this sentence.
This is in order to let readers agree with importance of your research.
 強調用の英語 Only, No, Important, Strongly
【参考図書】
 ・理系のための研究生活ガイド第2版(論文の5W1H、145-147ページ、坪田一男)

(7) 引用文献


        【参考図書】
 ・理系のための研究生活ガイド第2版(坪田一男)
  (文献はデータベースを活用する、151-152ページ)
  (自分の文献で研究の歴史を語る、153ページ)

(8) 謝辞


             【参考図書】
 ・理系のための研究生活ガイド第2版(謝辞や研究費補助は丁寧に、153ページ、坪田一男)

(9) 題名/ Title


     学術論文の題目の付け方
キーワードを挙げる。
自然にくっつける。
 形容詞を動詞に変えてみたりする。