4−3.学術論文の投稿・改訂・受理・掲載

(1) 背景 (Background)


 1) 背景
  @大変 学術論文の投稿・改訂・受理・掲載プロセスは大変
プロセス・ステップ、専門用語、判断の場面が非常に多い
学術論文を初めて投稿する学生さんはこれらの要因でつまづくことが多い。
  A指導 指導も難しい。
 2) ダメなパターン
  @Goal 学術論文の投稿・改訂・受理・掲載プロセスについての知識不足のためにゴール設定を間違える
  APlan
   時間・作業の過少評価 学生さんが学術論文の投稿・改訂・受理・掲載プロセスが大変であることを知らずに時間・作業過少評価する。
→過程の修了に支障が出る。
   順序 プロセス・ステップを実行する順序を間違える
 3) 要因
  @未経験 学部生までの人生で知らない方から査読コメントをもらって改訂する機会はほとんどない。
 (実験や文章読解であれば小学校からの経験がある)
  Aプロセスの多さ プロセス・ステップが多い
下記を参照。
  B専門用語 出版業界の専門用語が多い
  C判断 判断する場面が多い


(2) 目的 (Purpose)


 1) 目的(学習)
  @投稿・改訂プロセス 論文執筆・投稿・改訂・受理・掲載の流れルール学ぶ
 ・第一著者として
 ・共著者として学術論文に関わりながら
 【参考図書】
  ・科学英語論文のすべて第2版(日本物理学会)
  ・理系のための研究生活ガイド第2版(「電子投稿」にもルールとマナーがある、155-164ページ、坪田一男)
  ・科学者として生き残る方法(序論、13-23ページ、F. ロージ・T. ジョンストン)
  A執筆能力の向上 査読で掲載拒否になる可能性がある状況で真剣書くことで執筆能力が向上する。
 【参考図書】
  ・科学者として生き残る方法(F. ロージ・T. ジョンストン)
   (科学とライティング:総論、246-253ページ、査読のある発表、253-256ページ)
  B論理的思考能力の
   向上
共著者の方と真剣議論することで論理的思考能力が向上する。
査読者の方のコメント真剣対応することで論理的思考能力が向上する。
 2) 目的(研究)
  @研究業績 【参考図書】
 ・理系のための研究生活ガイド第2版(坪田一男)
  (絶対に英語論文が書けるようにならなければならない、135-137ページ)
  (自分の業績に関心を持つ、252-253ページ)
  (英語論文・総説が第一の業績、253-254ページ)
 ・科学者として生き残る方法(F. ロージ・T. ジョンストン)
  (自分の研究を人に知ってもらう、178-179ページ)
  (論文発表:なぜ発表するのか、どの雑誌に発表するのか、179-181ページ)
 ・ダンドリ仕事術(インプットしたらアウトプットする!、134-135ページ、吉山勇樹)
  A投稿した方が良い
   面白いと
   思ってくれる人
自分では納得がいかない結果でも面白いと思ってくれる人はいるので投稿した方が良い。
 (自分では思ってもみない引用のされ方をすることもある)
   解釈してくれる人 自分ではうまく解釈できない結果でも学術論文としてまとめた方が良い。
 ・学術論文として出版された後にうまく解釈してくれる人が現れることがあるから
 ・査読者の方がうまく解釈してコメントをくれることがある。
  (査読者の方がこう解釈したらどうだろうかという提案をしてくれることもある)


(3) 方針 (Strategy)


 1) 早めに 早めに取り掛かる。
  @書き始める基準 説得力のある証拠が出来たら(データが揃ったら)取り掛かる。
 2) 基本方針 ガードレール型の指導を行う。
 【参考図書】
  ・OJT完全マニュアル(「考える余地」を与える「ガードレール」型の指導を行う、36-37ページ、松尾睦)
 3) 具体的方針 学術論文の投稿・改訂・受理・掲載プロセスの全体像(Overview)をつかむ。
→小さな単位にブレイクダウンする(ブレイクダウンすることを手伝う)。
ステップバイステップで実行する。
 【参考図書】
  ・ダンドリ仕事術(吉山勇樹)
   (急がば回れ!、16-17ページ、全体像を捉える!、126-127ページ)
   (逆算の発想を!、128-129ページ、ゴールまでの道のりを細切れに考える!、74-75ページ)
 4) 助言
  @基本方針
   時間の見積 どのプロセス・ステップにどれくらいの時間がかかるかを助言する。
   段取り 事前に手を打つことで難しい作業をなるべく難しくないようにする。
あまり先のことを言わない。
 →「そんな先のことを言われても…」と思われるので。
  A目的の意識づけ
適宜、上記の学習研究上の「目的」を意識させるようなことを言う。
   h-index 博士課程を修了したらポスドクになりたいの?
ポスドク募集に応募すると最近はh-index評価されるらしいよ。
学術論文が0編だとh-index はだよ。
初めての学術論文が出版されても引用されるまではh-index はだよ。
引用されるまでには時間がかかるから早め投稿改訂したほうがいいよ。


(4) 事前準備 (Preparation)


 1) 共著者の方
  @基本方針 指導教員・受入教員と相談しておく。
  Aお願いする機会
   測定の際 測定をお願いするときに学術論文として発表できるだけの良い結果が得られたら共著に入ってもらうように伝える。
 (測定したからといって学術論文として発表できるだけの良い結果が得られるとは限らない。)
   学会 学会。
 2) 注意 重投稿をしてはいけない。
評判下げるのは一瞬でできる。


(5) 投稿雑誌の選択 (Journal)


 1) 方針 投稿雑誌を決める(投稿雑誌により書く内容が変わるので)。
 【参考図書】
  ・科学者として生き残る方法(F. ロージ・T. ジョンストン)
   (論文発表:なぜ発表するのか、どの雑誌に発表するのか、179-181ページ)
 2) 候補
  @普段 よく読む学術雑誌を候補に挙げる。
引用している学術論文が多く掲載されている学術雑誌を候補に挙げる。
読者・査読者・編集者の方に研究内容や重要性を分かってもらいやすい
  A新しい学術雑誌 新しい学術雑誌(オープンアクセス形式が多い)も考えてみる。
 ・Science Advances (American Association for the Advancement of Science)
 ・Progress in Earth and Planetary Science (Japan Geoscience Union, JgGU)
  B特集号 学術雑誌の特別号が企画されることがある。
特別号に掲載されると同じ研究分野の研究者の方の目に留まりやすい。
 3) 印象 学術雑誌の特色を考える。
 ・American Mineralogist だと鉱物学的色彩が強い。
 ・Journal of Geophysical Research だとしっかりした研究が多い。手法を詳しく書く。
 ・Review of Scientific Instruments だと実験手法として新しい研究。
 4) ウェブサイト 学術雑誌のウェブサイトに行ってどのような論文を求めているかを読む(Scope など)。
 ・American Mineralogist の場合は、Scope & Mission of the Journal
 ・Progress in Earth and Planetary Science の場合は、Aims & Scope
 5) インパクトファクター 学術雑誌のインパクトファクターを調べる。学術雑誌のウェブサイトに載っていることが多い。
新しい学術雑誌にはインパクトファクターはない。
 【参考図書】
  ・理系のための研究生活ガイド第2版(ジャーナルのインパクトファクターに注目、137-140ページ、坪田一男)
  ・科学者として生き残る方法(F. ロージ・T. ジョンストン)
   (査読付きの学術雑誌:特に重要なケース、181-182ページ)
   (サイテーション・インデックスとインパクトファクター、182-184ページ)
 5) 選択 学術雑誌が求めているものと書こうとしている学術論文の内容が合致していれば、その学術雑誌を投稿先に選ぶ。


(6) 学術論文の形態の選択 (Paper Style)


 1) 方針 Regular Article (通常の学術論文)かレター(Letter)かどうかを決める。
 【参考図書】
  ・科学者として生き残る方法(レターと通常の論文、257-265ページ、F. ロージ・T. ジョンストン)
   (論文・レターの構造:タイトル、要旨、序論、結論、参考文献、178-179ページ)
 2) レターの特徴
  @ページ制限 レターの場合はページ制限がある。American Mineralogist の場合だと、刷り上がり4ページ。
必要事項を簡潔に書く。
雑誌のウェブサイトに図、表などを載せることができるか考慮する。
  A査読期間 査読期間が短い場合が多い。


(7) 草稿の執筆 (Writing a Draft)


 1) 共著の方
単著の場合は、このステップはなくて良い。
 【参考図書】
  ・理系のための研究生活ガイド第2版(論文に責任のとれる人をauthorにする、143ページ、坪田一男)
  @同意 共著者として論文を書いて良いかを確認する。
投稿する学術雑誌をどれにするかについても議論する。
  A他の共著の方 だれを共著に含めるかを議論・確認する。
  B責任著者 だれを責任著者(corresponding author)にするかを議論・確認する。
責任を取れる人にする。
  C著者の順番 共著者の順番を議論・確認する(第一著者、第二著者、など)。
一般的には貢献順。
  D後で頼むことも 論文草稿を送りつつ共著に入って頂けませんかとご意見を伺うこともある。
 2) 原稿執筆プロセス
Manuscript. Ms と略すこともある。
  @草稿
   (私なりの)
取り掛かりやすい所から早めに始める。
題、著者、方法、はじめになど(学術論文の執筆・構成を参照して下さい)。
  A投稿規定
   図の色付け 図にを付けた場合、学術雑誌の印刷費用を払う必要があるかどうか。
   長さ制限 論文に長さ制限があるかどうか。
  B引用文献 学術論文の引用には文献管理ソフトウェア(EndNote など)を使用する。
 【参考図書】
 ・理系のための研究生活ガイド第2版(坪田一男)
  (文献はデータベースを活用する、151-152ページ、エンドノートで読書文献ファイルを作る、106-108ページ)
 ・科学者として生き残る方法引用戦略と結果、184-188ページ、F. ロージ・T. ジョンストン)


(8) 共著者との議論と英文校正 (Discussion with Coauthors, English Correction)


 1) 共著の方
  @手順 共著の方にメールで論文原稿を送る。
 ・投稿予定の学術雑誌を書く。
 ・論文原稿に長さ制限がある場合、その旨と論文原稿を長くできるかどうかを書く。
 ・これまでにが論文原稿にコメントしているか、この後論文原稿を送るかを書く。
 ・コメントを送り返してほしい日(締切日)をメール内に書く。
共著の方からのコメントを待つ。
共著の方方からのコメントが届く。
共著の方からのコメントに基づいて原稿を直す(必要に応じて議論する)。
学生さんが共著の場合、共著論文執筆の手順を学んでもらうためにメール・コメントを転送する。
共著の方に論文原稿へのコメントのお礼(受け取り確認)のメールを送る。
他の共著の方に論文原稿をメールで送る。
【論文原稿の投稿後】
 論文の投稿時に査読者へ送るためのPDF ファイルが作成されるので、共著の方にメールで送る。
  Aコメントの記入方法 ・印刷した原稿に手書きで記入したもの
・Word ファイルに校閲内の「変更履歴の記録(Track changes)」、「コメントの挿入」機能を使って記入されたもの。
 複数の人が文章を校正するときに有用。
 メール送信できる。
 どこが修正されたのかが分かりやすい(明確にできる)。
  B修正 校閲タブをクリックする。
→変更箇所の次へをクリックする。
→良ければ承諾をクリックする。
→次へと承諾の繰り返し。
 2) 英文校正 英文校正を企業に頼むこともできる。
費用がかかるので、財源を議論する。


(9) 投稿規定 (Manuscript Style)


 1) ウェブサイト 投稿雑誌のウェブサイトに行く。
投稿雑誌の投稿規程(Style manual)を読む。(Information for authors)
 ・American Mineralogist の場合は、Information for Authors
 ・Progress in Earth and Planetary Science の場合は、Instructions for authors
面倒でも我慢して読む。
 【参考図書】
  ・科学英語論文のすべて第2版原稿作成と電子原稿、261-263ページ、日本物理学会)
 2) 出版費用 出版費用を学術論文の著者が払う必要があるかどうかを確認する。
→著者が払う必要がある場合は、出版費用の財源を話し合う。
 3) ファイル形式 勧められているファイル形式。
 4) セクション 指定されているように書く。テンプレートがある場合もある。
 5) 長さ制限
 6) 原稿の形式 図・表を原稿文章ファイルの最後に掲載する形式かどうか。


(10) 投稿準備 (Preparation for Submission)


 1) 論文原稿の修正 投稿雑誌の投稿規定に従って論文原稿を修正する。
  @注意点 あまりに投稿規定に従っていない場合は編集者査読者印象悪くなる
編集者が投稿者に投稿論文が投稿規定にそうように改めるようにするのに時間を使うのは無駄だから。
論文原稿を投稿規程にそうように修正する時間がないといって直さないのは編集者の方の時間奪っている
  A典型的な例  ・ダブルスペース
 ・Times New Roman、12ポイント
 ・アメリカの学術雑誌に投稿する場合は、ページの大きさをレターサイズにするように求められることがある。
 ・ページ番号を振る。
 ・行番号を振る(投稿作業中にPDF化する際に自動で振ってくれることもある)。
 2) カバーレター カバーレター(送り状)を書く。
レターとして投稿するときは投稿論文がなぜレターに相応しいのかを書く。
特集号に投稿するときはその旨を書く。
 【参考図書】
  ・科学英語論文のすべて第2版(雑誌へ投稿するときには送り状を添える、310-311ページ、日本物理学会)
  ・理系のための研究生活ガイド第2版(投稿する際のカバーレターの例、156ページ、坪田一男)
 3) 査読者候補の方 査読者候補の方(Potential Reviewers、Suggested Reviewers)を誰にするか決める。
 数人挙げる。
 不正に有利な査読を防ぐために以下の研究者は候補として不適切な場合がある。
  ・共同研究を行っている研究者
  ・博士課程在学時の指導教員
  ・博士研究員時の受入研究者
  ・同じ研究組織に所属している研究者
  ・家族(親子・夫婦で同じ分野の研究者の場合がある)
 【参考図書】
  ・科学者として生き残る方法査読の仕組み、135-142ページ、F. ロージ・T. ジョンストン)
 編集者の方が公正な査読が可能であると判断した場合は上記の研究者になる場合もある。
査読を依頼しないでほしい方を挙げることができることが多い。
 ・直接の競争相手
 ・意見が対立する研究者
 【参考図書】
  ・科学英語論文のすべて第2版(編集者と査読者の役割、311-312ページ、日本物理学会)


(11) 投稿 (Submission)


 1) 論文投稿用
   ウェブサイト
投稿雑誌のオンライン論文投稿・改訂用ウェブサイトから投稿する。
 (American Mineralogist の場合は、Online Manuscript Submission and Peer Review
 (初めて投稿したときは印刷した論文原稿を送りました。)
 【参考図書】
  ・理系のための研究生活ガイド第2版(「電子投稿」にもルールとマナーがある、155-164ページ、坪田一男)
 2) 投稿
  @アップロード 論文原稿・図・表・カバーレターなどのファイルをアップロードする。
  A必要事項の記入 著者やその所属などの必要事項を記入する。
タブ形式になっているウェブサイトが多い。
  B内容確認 PDFファイルが作られるので内容を確認する。
正しくPDFファイルが作られていれば同意する。
  C参考図書  ・科学英語論文のすべて第2版電子投稿の実際、286-287ページ、日本物理学会)
 3) 状況確認 投稿中(Submitted)になる。
オンライン論文投稿・改訂用ウェブサイトで進行状況を確認できる。
 【参考図書】
  ・科学英語論文のすべて第2版(投稿原稿の進行状況の確認、287ページ、日本物理学会)
 4) 共著の方への連絡 共著の方に投稿した旨を知らせるメールを送る。
論文の投稿時に査読者へ送るためのPDF ファイルが作成されるので、共著の方にメールで一緒に送る。
 5) 投稿→受理・出版
   の期間
学術論文の最初最後のページに投稿論文の投稿、改訂、受理の日付が載っていることが多い。
 「Received」、「Revised」、「Accepted」など。
 最長の期間は、11か月。
 最短の期間は、17日。
  (2015年5月4日に投稿して5月20日に受理、Kawazoe et al. (2015 American Mineralogist))
 出版までの期間
  ・Kawazoe and Ohtani (2006 PCM)、2005/03/30 - 2006/03/09、11か月と1週間
  ・Kawazoe et al. (2010 HPR)、2009/08/07 - 2010/03/17、7か月と1週間
  ・Kawazoe et al. (2011 AmMin)、2011/02/27 - 2011/11/01、8か月


(12) 投稿後、査読開始まで (After Submission and Before Review)


 1) 編集者の割り当て 編集者(Editor)が割り当てられる。
意思決定をすることもある。
 2) 共著者の同意確認 論文投稿に同意していることを確認するためのメール(Authorship Check)が共著者の方に届くことがある。
共著者には論文の研究内容に多大に貢献している人がなる。
 ・発想 ・計画立案 ・データ取得 ・データ解析 ・解釈 ・論文原稿の執筆・改訂
 3) 副編集者の割り当て 副編集者(Associate Editor)が割り当てられる。
意思決定をすることもある。
レターへ切り替えることを勧められることもある。
 4) 原稿の修正依頼 書類不備のために投稿者に修正依頼が届くことがある。
 とある学術雑誌の例:
  表紙にメールアドレスが書かれていない。
 5) 編集者と
   査読者のやり取り
編集者・副編集者の方が査読者候補の方に査読依頼メールを送る。
査読依頼のメールを受け取られた方が査読をする・査読をしないの旨を編集者に返信する。
査読する旨のメールを返信された方に査読者決定する。
査読者の方は2-4名であることが多い。
編集者・副編集者の方が査読をすることもある。
 6) 編集者と
   責任著者のやり取り
査読が遅れているとの連絡が届くことがある。
 ・大きな学会がある場合、短期間の査読を引き受けてくれる査読者の方を見つけにくい場合がある。


(13) 査読 (Review)


 1) 状況確認と助言
  @ウェブサイト オンライン論文投稿・改訂用ウェブサイトで進行状況を確認できる。
 【参考図書】
  ・科学英語論文のすべて第2版(投稿原稿の進行状況の確認、287ページ、日本物理学会)
  A助言
   確認頻度 投稿論文の改訂に向けたスケジュール調整のために一日一回は状況を確認する。
   「With Editor」 「With Editor」になったらもうすぐ意思決定メールが届くので、助言するからその旨伝えてと言っておく。
次の項の意思決定メールのことを説明する。
 2) 査読 査読者の方が査読を開始する。
査読中(Under Review)になる。
レターの査読期間は短い。最短投稿日の三日後に査読結果が届いたことがある。
 【参考図書】
  ・科学英語論文のすべて第2版査読者の心得、314ページ、日本物理学会)
  ・理系のための研究生活ガイド第2版レビュワーが見ているポイント、143ページ、坪田一男)
  ・科学者として生き残る方法(F. ロージ・T. ジョンストン)
   (査読の仕組み、135-142ページ)
   (非公開での査読:雑誌の査読や研究助成団体の審査、143-144ページ)
   (非公開の査読での職権乱用、144-150ページ)
 3) 査読の終了 査読者の方が査読の手引き(Reviewer Instructions、Review Manuscript Instructions など)を読む。
査読者の方が評価に関する質問への回答を査読システムのウェブサイトからアップロードする。
 ・手法の健全性(Technical Soundness、Rigor in Science)
   ・誤差の評価(Statistical Analysis)
   ・再現性の確保(Reproducible?)
 ・追加データの必要性(Further Evidence)
 ・過去の研究が適切に引用されているか(Previous Literature)
 ・分かりやすく英語で書かれているか(Clear English)
 ・誇大宣伝か(Overselling)
査読者の方が査読コメントを査読システムのウェブサイトからアップロードする。
査読者の方の査読コメントが全員分揃うと査読が終了する。
 4) 編集者の意思決定 編集者の方が意思決定する。
  @助言 編集者の方がどのように意思決定するかを助言する。


(14) 査読後の意思決定メール (Decision Letter)


 1) 編集者からのメール 編集者の方から査読者・編集者による評価・コメントのメールが届く。
改訂になった場合は、改訂中(In Revision)になる。
 【参考図書】
  ・理系のための研究生活ガイド第2版エディターから投稿者へのメール、158-161ページ、坪田一男)
 2) 編集者の意思決定
  @意思決定 受理(Accept):私は投稿論文が改訂なしで受理されたことが有りません。
大幅な改訂
(Major Revision):大幅な改訂が必要。
小幅な改訂(Minor Revision):小幅な改訂が必要。
掲載拒否(Reject)になるときもある。
  A心持ち(私の場合) 掲載拒否でなければOK。改訂すれば投稿論文が受理されるということだから。
ゴールは投稿論文が受理されること。
Minor Revision でも改訂作業が一般的なMajor Revision くらい大変なこともある。
Major Revision でも改訂が一般的なMinor Revision くらいのこともある。
追加実験・分析を求められていない場合にはマウスを動かしてキーを打てば改訂できる。
 3) 改訂の締切 改訂の場合は、改訂の締切が書いてある。
多くの場合、数カ月(2カ月とか)。
(American Mineralogist のLetter の締切は「As soon as possible」でした。2015年)
 4) 査読者からの評価
  @論文の長さ 論文の長さ制限がある場合は、論文が適切な長さかどうか。
  A図表 省いたり、まとめたりした方がよい図表があるか。
  Bオンラインマテリアル 論文の長さ制限がある場合は、ウェブサイトに移動した方がよい図表や補遺(Appendix)があるか。
  C全体の質
  D特別なコメント ブレークスルー(breakthrough)か、これまでの研究・技術の発展から予想ができる範囲の結果か。
 5) 査読者からのコメント
次の項。
 6) 編集者からのコメント
 7) 査読者の名前 査読者の名前が明示されている場合でも論文が受理されるまで言わない
 (査読−改訂プロセスへの影響を避けるため)
 8) 共著者の方 共著者の方に意思決定メールを転送する。
自分が今後何をするかを書く。
 ・改訂原稿の原案を書く。
 ・返答レターの原案を書く。


(15) 査読者からのコメント (Comments by Reviewers)


 1) 総評
  @したこと・重要性 をしたか。
重要なことをしたか。
  Aしっかりさ しっかりした(Solid)研究か。
手法が十分に記載されていて、十分な証拠が結論を支持しているか。
  B新しさ・価値 何が新しいのか。
出版する価値があるかどうか。
 2) 個別の点
   はじめに 引用論文の追加。
   手法 手法の補強。過去に類似した研究がある場合は、その研究との違い。
複数の較正を使う場合、その違い。
 ・赤外吸収スペクトルから含水量を求める式
 ・圧力決定のための圧力標準物質の状態方程式
   結果 データの追加。表の追加。
過去の研究のデータと異なる場合の解釈
   議論 実験結果の解釈の変更や解釈の提案(Suggestion)。
過去の研究と同じ議論をする場合は、簡略化の提案(レターの場合、紙面の節約のため)。
   引用文献 引用文献の様式の修正。
   図表 表の追加。
複数の測定からのデータを組み合わせて表を作る場合、分析方法の明示。
番号の付け方。
Supplementary の図表を通し番号で付けるか、S を付けるか。
   全体 文章を読みやすくする提案。
文法の間違い。
編集上の修正。
フォントサイズの統一。
定性的表現から定量的表現への変更。
 3) 印象 査読コメントへの印象は時間とともに良いものへと変わることがある。
想定外のコメントはよく落ち着いてから印象を決める。
落ち着いてから考えると想定外のコメントは投稿論文の質を向上させてくれたことが多い。


(16) 改訂 (Revision)


 1) コメントへの対応
  @基本方針
誠実に対応する。
 【参考図書】
  ・科学英語論文のすべて第2版(著者の心得、313-314ページ、日本物理学会)
  ・理系のための研究生活ガイド第2版(投稿者からエディターへの返事、162-163ページ、坪田一男)
  ・科学者として生き残る方法査読者とどうつきあうか、268-276ページ、F. ロージ・T. ジョンストン)
  A行動方針 コメントをよく読む。
査読者からのコメントにデータの追加がある場合、どこまで満たすかを考える。
改訂した個所が査読者の方に分かりやすいように工夫する。
 ・改訂した個所を赤字にする。
 ・Word の変更履歴の記録コメントの挿入の機能を使う。
  A注意事項 査読後にコメント・提案を受けた箇所以外の変更を加えることは、必要最小限に留めるべき。
Change after the revision is not good.
査読者によって内容の確認を受けていない箇所が出来てしまい査読を軽視していることになる。
  Bデータの追加 必要であればデータを追加する。共著者の方にデータの追加をお願いする。
 2) 返答レター
  @方針 テキストエディター(Word など)を開く。
→ファイルにタイトルを付ける(Response to the Comments by the Reviewers など)。
査読者ごとの見出しを付ける(査読者の一人目など)。
査読コメントを貼りつける。
→査読コメントに番号を振る。
返答の内容を書く。
  A学生さん 返答レター(Response Letter)のお手本を渡す。
 3) カバーレター 改訂原稿投稿時のカバーレターのお手本を渡す。
→カバーレターを書く。
 4) 投稿 ウェブサイトから投稿する。
 5) 再改訂 再改訂が必要な場合もある。
  @査読者へのメール 査読者へ改訂原稿が送られてくることがある。
メールに締切が書いてある。
  A再査読 査読者が再び査読する。
  Bコメントの
   アップロード
査読者がコメントをアップロードする。
 6) 参考図書 科学者として生き残る方法査読者とどうつきあうか、268-276ページ、F. ロージ・T. ジョンストン
 7) 注意 査読者の方がポスドクとして雇ってくれるかもしれない。
 ・ポスドクを雇う研究費をもっているかもしれない。
 ・研究の対象・興味が近いはずである。
 →ポスドクとしてウチに来てくれないかなぁと思うかもしれない。


(17) 受理 (Accept)


 1) 意思決定メール
  (Decision Letter)
  @プロセス 編集者の方から受理(Accept)を知らせるメールが届く。
学術論文が受理(Accept)になる。
査読者の方から「適切に対応ができているので受理を勧めます」とのコメントを頂くこともある。
(そうではないけど受理になることもある)
  A投稿から
   受理までの期間
私の投稿論文が受理されるまでの最短記録約二週間です(Kawazoe et al., 2015)。
 2) 著作権フォーム
  (Copyright Form)
著作権フォームをメール添付やファックスで送ったり、ウェブサイトでアップロードしたりする。
 3) 図の著作権
  (Figure Permissions)
図の著作権についてのフォーム(Figure Permissions Form)を送る。
 4) 前刷り(Preprint) 学術雑誌のウェブサイトに前刷り(Preprint)が載る。
 5) 自分のウェブサイト 自分の研究用ウェブサイトのお知らせ・学術論文の個所を更新する。
 【参考図書】
  ・理系のための研究生活ガイド第2版(坪田一男)
   (自分の業績に関心を持つ、252-253ページ、英語論文・総説が第一の業績、253-254ページ)
   (業績目録を作る、255-257ページ)


(18) 校正・掲載 (Proof Check and Publication)


 1) 校正
  (Proofreading)
校正用論文(校正刷り(Proof))が出来た旨のメールが届く。
American Mineralogist では、論文の受理から約12週かかるとのこと。
ウェブサイトに行って校正用論文(PDF 形式)を見る。質問(Query)が着いてくることがある。
校正したり、質問に答えたりする。
 【参考図書】
  ・科学英語論文のすべて第2版校正刷り、314-315ページ、日本物理学会)
 2) 印刷中(In Press) 学術論文が印刷中(In Press)になる。何年何月号に載るかを教えてくれる。
 3) オプションの選択 別刷をいくら買うかを決める。
オープンアクセスにするかどうかを決める。
 4) 印刷 印刷(Publish)される。
学術雑誌のウェブサイトに掲載されたことを知らせるメールが届く。
 5) 印刷後
  @共著者の方 共著者の方に学術雑誌のウェブサイトに掲載されたことを知らせるメールを送る。
  A自分のウェブサイト 自分の研究用ウェブサイトのお知らせ・学術論文の個所を更新する。
 (出版年、雑誌の巻数、ページ番号)
 【参考図書】
  ・理系のための研究生活ガイド第2版(坪田一男)
   (自分の業績に関心を持つ、252-253ページ、英語論文・総説が第一の業績、253-254ページ)
   (業績目録を作る、255-257ページ)


(19) 掲載後の評価 (Evaluation after Publication)


 1) 問い合わせ 論文の内容についてのメールが届く。
 ・詳細の問い合わせ
 ・共同研究を持ちかけられる。
 ・他の研究者の方の研究に助言を求められる。
学会で話に挙がる。
 2) 発表での引用 学会発表やセミナーで引用されているかどうか。
 3) 学術論文での引用 学術論文で引用されているかどうか。
Google Scholar では「フォロー」から「自分の論文からの新しい引用」アラートを設定することができる。
学術論文が引用されたことをメールで知らせてくれるときもある。
Web of Science・Google Scholar Citations被引用数h-index として測ることが出来る。
 【参考図書】
  ・理系のための研究生活ガイド第2版(研究者個人を評価するh指数、140-142ページ、坪田一男)
  ・科学者として生き残る方法(F. ロージ・T. ジョンストン)
   (査読付きの学術雑誌:特に重要なケース、181-182ページ)
   (サイテーション・インデックスとインパクトファクター、182-184ページ)
 4) プレスリリース