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複素自己回帰係数および複素PARCOR係数間のユークリッド距離を輪郭形状
間の距離とする方法では、係数ベクトルの各要素に対する重みを同じくしており、
各要素が等質であるという仮定が入っている。しかし、一般には、その仮定の成
立する保証はない。ここでは、輪郭点列
に対して、複素自己回帰係数
を当てはめたときの誤差に基づく距離を定義する。
輪郭点列
から計算される
を、それぞれ、
と表すものとする。
このとき、輪郭点列
に複素自己回帰係数
および
を当てはめたときの平均2乗誤
差
および
は、それぞ
れ、
となる。 複素自己回帰係数
は、輪郭点列
に対して最適な係数であるから、明らかに
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(329) |
が成り立つ。従って、輪郭形状間の距離として
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(330) |
を用いることが考えられる。
この距離は各輪郭点列のスペクトルと密接な関係がある。これを示すために、
を式(7.28)の分母として
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(331) |
で定義し、係数
に対応する
を
とする。
このとき、距離
は、
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(332) |
のように変換できる。これは、距離
が二つの輪郭点列
のスペクトルの差の相対的な
尺度であることを示している。
さらに、距離
は、予測誤差が独立に平均
、分散
の
複素ガウス分布に従うとした時の尤度比とも関係している。輪郭点列
に複素自己回帰係数
をあてはめたときの最
大尤度は、式(7.24)と同様に、
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(333) |
で与えられる。一方、
に
をあてはめたとき
の尤度は、
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(334) |
となる。従って、その比は、
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(335) |
となる。
また、一般に刺激の強さとそれに対する感覚量との間には対数法則が成り立つと考え
られている。そこで、これを考慮すれば、輪郭形状間の距離を
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(336) |
と定義することもできる。
ところで、距離
および
は、一般に
、
であり、対称性が成り立っていない。
そこで対称性を成り立たせるために、それらの加重平均をとって、
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(337) |
あるいは
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(338) |
として、距離を定義することも考えられる。
さらに、実自己回帰モデルとの対応を考えると、距離
は、
音声認識の分野で尤度比距離と呼ばれているものの複素データ点列への自然な
拡張となっていることがわかる。
同様に、距離
は、板倉距離[45] を、
複素データ点列へ自然に拡張したものとなっている。
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Takio Kurita
平成14年7月3日