新入生オリエンテーション

5月にはいり、大学生活にも慣れてきた頃ですが、「ヒロシマ・平和・美術」というテーマを扱う一年生の教養ゼミの一環として、尾道〜百島〜大三島へのツアーに行ってきました。

尾道水道
尾道港のU2のお隣、3号上屋からツアーがスタート。

雨が降ったらシャレにならないツアー行程であったのですが、幸い好天に恵まれました。みんな日頃の行いが良い。

このページ内のすべての作品画像については、それぞれの作品を制作した作家が権利を所有しています。

広島県営3号上屋での柳幸典さんと原口典之さんの作品からツアーがスタートです。
アートベース百島のチーフマネージャーを務める大橋さんから作品の背景を含め、解説をしていただきました。

Yukinori Yanagi – Article 9
Yukinori Yanagi – Article 9

これまでも各地で展示されてきたArticle 9ですが、3号上屋では、福島での事故を暗示するような、散乱する放射性物質のマークの付いた大量のドラム缶に囲まれて展示されています。文節ごとに分解された日本国憲法第九条の条文が、ネオンの文字で灯されています。時折ネオンが消灯する瞬間、あれ?という表情をするみなさん。当たり前だと思っている存在も、存続する意思を持たなければ簡単に消えてしまうことを暗示しています。

Noriyuki Haraguchi – F-8 Crusader
Noriyuki Haraguchi – F-8 Crusader

そして隣に展示されている原口さんによるF-8クルセイダーの尾翼部分の原寸大レプリカの作品。精密に複製されていますが、中はベニヤでがらんどうになっています。このシリーズは、もともと学生紛争の最中、ベトナム戦争に投入された戦闘機F-4ファントムの尾翼部分をバリケードの中で制作したのが最初でした。戦争とは?米軍とは?安全保障とは?力の象徴でありながらも、内部が空虚な作品をとおして、さまざまなことを考えさせられます。

それからアートベースがデザインを手がけたフェリー百風に乗り込んでいよいよ百島へ。

百風
フェリー百風で百島へと移動します。

百島では島の集落のなかを歩いて移動しながらかつての中学校をリノベーションしたアートセンターであるアートベース百島へと向かいました。人の住む集落空間からあっという間に山の中に入るような展開に驚くみなさんですが、離島や中山間地域では油断するとすぐに自然に飲み込まれてしまうのです。

百島福田集落
福田の集落を通ってアートベースに向かいます。

アートベースでも原口さんと柳さんの代表作と対面です。

Noriyuki Haraguchi – Oil Pool
Noriyuki Haraguchi – Oil Pool
Yukinori Yanagi – Eurasia
Yukinori Yanagi – Eurasia

機械油の廃油を流しこんだ原口さんの代表作であるオイルプール《物性》と、蟻たちの移動によって国家のアイコンである国旗が次第に混ざり合っていく柳さんの代表作であるアントファームシリーズの《ユーラシア》という二つの作品。このほか、もの派の作家を多く育てた斎藤義重作品の展示などを見学した後、最後に旧百島東映をリノベーションした日章館へ。

Yukinori Yanagi – Illuminated Sun
Yukinori Yanagi – Illuminated Sun

硬派な現代美術作品の数々を見学してかなりお腹いっぱい状態のまま、百風で歌港へと戻り、再びバスに乗り込んで大三島へと向かいました。

岩田健 母と子のミュージアム
岩田健 母と子のミュージアム

まず最初に訪れたのは岩田健母と子のミュージアムです。伊東豊雄さんの設計した建物に、母と子をテーマにした大小様々な作品が、屋外を中心に展示されています。

今回は、3号上屋やアートベース、そして岩田健母と子のミュージアムと、美術を展示する空間の多様性を見てもらうこともテーマの一つでした。

いわゆるホワイトキューブの美術館にはまったく立ち寄りませんでしたが、美術の展示のあり方について、考えてもらうきっかけになればと思います。

そして最後にところミュージアムから伊東豊雄建築ミュージアムを見学して、島と美術を巡る長いツアーが無事終了。一年生のみなさん、長旅おつかれさまでした。

Toyo Ito – Silver Hut
Toyo Ito – Silver Hut