雑記

[読書記録] ピーター=ニコルス・狂人たちの世界一周


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原題は”A Voyage for Madmen” Peter Nichols。訳者は園部哲。
ヨット航海の動画を探してYouTubeで見かけた「ディープ ウォーター (2006) – ゴールデン グローブ レースとドナルド クロウハーストのドキュメンタリー」
https://youtu.be/SiWv12EL4LE?si=nzfAUBctA4NwWYxj
を見かけて、1968 年のサンデー タイムズ紙ゴールデン グローブ世界一周レースについて詳細を読みたくなった。

動力船しか乗ったことが無いので帆船の旅というがどれほど大変かは正確には分からないが、前進も後進もすべて風まかせというのは、乗り物として心もとないことは間違いない。ただ一方で自然に任せて静かに滑走する舟に憧れがあるのも事実で気分はモワテシエ。もしレースに出るとすれば自分の中の欲求は自分の限界を試したいという、チャイ・ブライス。自ら開発した電気工作物をトリマランに取り付けて人生の一発逆転を狙ったクロウハーストには、同じような趣味を感じて共感する(ただし、自分はそんな身の程知らずではないと思いたいが)。それぞれの狂人たちが大海原に繰り出し、風とヨットに翻弄されながら、本性を試される様は長いようで短い研究人生にも似てくる。クロウハーストの欺瞞はさながら捏造論文のそれで間違いない。サンデータイムズ紙が設定したゴールを途中で放棄し、自らの魂の浄化として2週目に突入したモワテシエ、宗教に転向してしまった研究者に似る。難局に燃えるチャイ・ブライス、多くの研究者の共感を呼ぶだろう。結局、一人になったときに本当の自分が分かる。