0−4.研究指導に困る人への対策

(1) 背景


 1) 困る人 研究指導に困る人がいる(研究指導に困らない人は珍しい)。
  @頭の固い人 指導無視拒否する。
いい加減なことをする。
・オープンマインドでない。
  A言い訳 ・取り繕うことが上手な人がいる。
  →虚構・メッキを見抜かなくてはダメ。
・言い訳にならない言い分けをする。
 2) 原因
  @そもそも より深く考えることを放棄している。
 現状に甘んじている。
 →状況判断しない。
 →改善行動を取らない。
 →改善しない。
 →伸びない。迷惑をかけ続ける。
  A論点 より深く考えるためにはたぶん以下の要素が重要。
 ・思考の柔軟性 (⇔頭の固さ、「より良いものがあるかも?」と思わない。現状で問題ないと思っている。)
 ・自立性     (⇔依存性、誰かにやってもらえばOKと思っている)
 ・規範・倫理   (⇔周りの人に迷惑をかけてもいいと思っている)
 ・実現力      (⇔研究が思うように出来ない。ストレスのはけ口はそこ?)
  B原因の原因 プライドが高く聞く耳をもたない(プライドが高い割には研究が出来ない)。
 →自分の客観視が出来ない。
 →改善の必要性を感じない。
以下に出てくる人は、リーダー適性のない人にも当てはまる。
関係があるのだろう。
 【参考図書】
  ・任せる技術(小倉広、こんな人にリーダー任せてはいけない、73-79ページ)
 3) 対策の必要性 研究指導に困る人には特別な対策が必要。
研究指導に困らない人は普通に研究指導すれば伸びる。
 【参考図書】
  ・OJT完全マニュアル(松尾睦)
  ・「ドラえもん」に学ぶダメな人の伸ばし方(小林奨)

(2) 目的・目標


 1) 目的
研究指導に困らなくなるようにする。
 →みんな伸びる
 2) 目標
  @研究指導 学生・博士研究員さんの望ましい行動を増やす。
 →研究指導に困らなくなる。
 →みんな伸びる
  A大学院入試 研究指導にとても困りそうな学生は入学させない
最終面接は本来入れてはいけない人を入れることが罪である。
 【参考図書】
  ・42歳からのルール(田中和彦、面接は、選ぶだけではなく、選ばれる場でもある、106-107ページ)

(3) 方針


 1) 自分の心構え 相手に期待しない。””からのスタートと思う。
たとえ、博士課程大学院生博士研究員でも。
 2) 基本方針 忍耐強く(Patient)。
 →営業スマイル(Always smiling)。
 →証拠を揃える。
 →証拠が揃ったら事実言う
 →このままではダメなことが起こるという予想を経験に基づいて言う。
 3) 事前の対策
  @貼り紙 貼り紙を貼っておく。
 4) 対策
  @能力評価 早く相手の能力を評価する。
 ・英語のせい?→英語が通じた後の反応を見る。
 ・基礎学力が足りないから?→簡単な宿題を出して反応を見る。
 ・考えていない?→質問をして反応を見る。
上ばかり見ていても、下ばかり見ていてもいけないが、
大学院生・博士研究員(ポスドク)さんの現状のレベルを評価把握することは
行動パターンを知りレベルアップへの対策を練るために重要である。
  A指示の出し方を
   工夫する
 【参考図書】
  ・これだけ!OJT(中尾ゆうすけ、97-139ページ)
  B事実を伝える レベルが高くないことを伝える。
【相手が考えていない場合】
 早く考えていないことを分からせる(下記、参照)。
You ignore my advice/suggestion.
  C将来のリスク
   伸びないリスク 時間・資金・労力・やる気の浪費
 時間がなくなる。研究費がなくなる。失敗が怖くなる。本気ではなかった。
 情熱を失う。長期的な視点がない。得意ではないことに手を出したから。
 →挫ける
 →明るくない未来

 【参考図書】
  ・やるべきことが見えてくる研究者の仕事術(島岡要、67ページ)
   就職先を失う 博士課程大学院生の場合はポスドク先。

(4) 指導・助言・提案を無視・拒否する


 1) 予期される結果 ムダ努力をする。You wasted your time.
 →結果として伸びない・伸びが遅い
 2) 行動パターン 指導・助言・提案を無視拒否する。人の話を聞こうとしない。
「こうしたらいいよ」と言っても、無視される。
→議論が成立しない。
指導・助言・提案しても理由・根拠もなく出来ないと言う
指示を出していたことを理由・根拠もなくしない
他の人に迷惑を掛ける行為を止めない(掃除をしない。使いっぱなし)
 3) 原因 頭が固い(思考に柔軟性がない)。
 →自分の現状の客観視が出来ない。
 →思い込みが激しい。
 →重要性を掘り下げて考えることが出来ない。
 →真剣に考えていない。軽んじている。
 4) 対策 客観的事実に基づいて思い込みが激しい点を指摘する。
You are strongly biased. Your vision is closed.
他の学生・ポスドクが出来ている場合は、その旨を伝える。
 (ムダに粘らない。考える時間を与える。)
助言して出来ないと言ったことが出来たら、出来たよねと言う。
迷惑に感じたら迷惑だと言う。

(5) いい加減な人


 1) 予期される結果 仕事上の抜け漏れが多い。
ケアレスミスが多い。スペルミスが多い。
詰めが甘い。
 2) 対策
 3) 責任 あなたは自分の研究に責任があるよ。You are responsible for your research.
もし責任を負わないのであればこれはあなたの研究ではないよ。
 If you was not responsible for this research, this is not your project.
責任のある人がケアレスミスを連発していてはいけない。
 【参考図書】
  ・任せる技術(小倉広、「作業」ではなく、「責任」を任せる、60-66ページ)
 4) 信用 以下のことを言う。
 ・「確認したら?」
 ・「あんまりケアレスミスが多いと信用されなくなるよ」と言う。
 ・「科学研究にとって信用は大事だよ」と言う。
 ・「査読のときに査読者の方はケアレスミスの多い原稿の内容は信じないよ」と言う。
 ・「査読のときに掲載拒否になるよ」と言う。
 5) 言葉の"壁" 英語が出来ることで研究が出来ると勘違いしている学生さん

(6) オープンマインドでない人


 1) 予期される結果 伸びない。伸びが遅い。
知識が足りないために困難に会う。
 This is a typical case.
 You will have difficulty in research because of limited knowledge.
 2) 行動パターン 自分の専門でないと言い訳をする。
 (例:私は〜学が専門だから)

(7) やらない・考えない人


 1) 人を頼り過ぎる人
  @予期される結果 仕事が進まない。
伸びない。伸びが遅い(周りが伸びている状況では伸びが遅いは伸びないにほぼ等しい)。
  A行動パターン 「次はこうしたら良い」という話になる。
 →議論の際に自分の意見をなるべく言わない。自分の判断をなるべく加えない。議論が成立しない。
 →すぐに依存する相手に丸投げする。
 →「指導教員が○○と言った」とだけ言う。
  B原因 自立(Independency)していない。
当事者意識がない
  C対策 以下のことを言う。
 ・自分の研究に責任を持たなくてはいけませんよ。You should be responsible for your research.
 ・何月何日ごろが期限ですね。間に合わなかったら、○○ですよ。
 ・あなたには成果を出す責任があるんですよ。
 2) やらない人
   仕事が遅い人
  @予期される結果 仕事が進まない。
伸びない。伸びが遅い(周りが伸びている状況では伸びが遅いは伸びないにほぼ等しい)。
  A行動パターン やらない。
やろうとしない理由を一生懸命探そうとする.。
 【参考図書】
  ・任せる技術(小倉広、1日1回、週1回、164-165ページ)
  B原因
   期限の軽視 仕事の期限を守らなくても良いと思っている。
 (仕事の期限についての判断基準がおかしい)
 →遅くても良い(許される)と思っている。
  (遅い方向にマイペース)
 →仕事の速さを上げようとする気がない。
 →作業の効率化に取り組まない。Do you want to improve your efficiency?
 →作業が速くならない。
 →仕事が遅いまま。
   出来ない やり方を知らない。
 →教える。
 →効率的に取り入れようとする気がない。
 →教えたことの数割しか取り入れられない。
 →あまり伸びない。
 →相対的に見て出来ないまま。
  C対策
   全体の締切 プロジェクトの期限・締切を明確に伝える。
   ステップの締切 ステップごとの締切を設定し、明確に伝える。
【締切の作り方】
 全体像を把握する。
 作業ステップに分ける。
  作業ステップリスト
   ・実験予約
   ・実験準備
   ・実験
   ・データ取得
   ・データ解析
   ・論文原稿の執筆
 必要な時間を見積もる。
 各ステップの締切を考える。
【途中の見直し】
 残りステップが何かを考える。
 残り時間を考える。
 残りのステップの締切を考える。
【参考図書】
 ・任せる技術(小倉広、締め切りのない仕事に締め切りをつくれ、182-187ページ)
   許容範囲の基準 許容範囲の基準を示す。
 ここまでは可(Acceptable)、ここからは不可Not Acceptable)。
 不向きと言ってみる。You are not competitive.
黙認しない
   改善しない場合 繰り返し伝える。
 3) 考えない人
  @予期される結果 失敗繰り返す(You will repeat failure forever.)。
改善ができないから。
伸びない。伸びが遅い(周りが伸びている状況では伸びが遅いは伸びないにほぼ等しい)。
  A行動パターン 教える。
相手に質問はありますか?と聞く。
質問にいくつか答える。
相手が質問はもうありませんと言う。
後日、相手が分かっていない(聞いていないという)。
  B原因 相手が内容を理解していない。
考えていない。
  C対策 考えていない・分かっていないことを分からせる。
自分の現在位置、井の中の蛙。
二回目の実験で分かってないところは分かっていないとはっきり言う。

You should organize contents in your brain!
計画性
カレンダーを貼る。
紙に書いて渡す。
    @まとめシート
    A実験ノート 分かるために、実験ノートを書くことを指導する。
根拠も書く。
    Aマニュアル作成
   自ら考える利点 自ら考える
→基本原理(測定原理・構造)を理解する
→成功・失敗の原因を分析できる
→失敗を予測できる→失敗しない
→予期せぬことで失敗したら→必要な改善ができる
仕事(研究)が進む
教員も人間である。
教員も間違えることがある。
おかしいなと思ったらチェックすることを考える。
チェックする手法を考える。
教員に相談してみる。
チェックしてみる。
【参考図書】
 ・OJT完全マニュアル(松尾睦、190-205ページ)
 4) ”最小限の努力”で
  答えにたどり着こうとする人
  @予期される結果 研究の質の低下。
学生・博士研究員本人のレベルアップの妨げ。
  A行動パターン ごまかしに頼る。
ブラックボックス(既存のソフトウェア)に最初から頼る。
小手先のテクニックに頼る。
  B原因 自分で考えようとしない
詰め込み型教育のせい?
【参考図書】
 ・理系のための研究生活ガイド第2版(坪田一男)
  (学生時代の勉強と研究とは全然関係がない、31-33ページ)

(8) 迷惑な人


 1) 行動パターン
  @掃除・片付けをしない
  A時間外労働の強要 午後5時半以降に質問に来る学生。
あなたは私に超過勤務を強いている。これはダメです。
You force me to work overtime. This is unwelcome.
  Bムダ使い 研究資源をジャブジャブ使う。使えるものを違う用途で使う。
 2) 原因 他の人のことを考えない。
  @現実が分かっていない 理想と現実の区別がついていない。
現実には制約があり、その中で上手くやっていこうという考えがない。
節約することで限られた研究資金の中で最大限の成果を出そうという意識がない。
 3) 事前対策
  @貼り紙
 4) 対策
  @悪評 「あなたの評判悪い」と言う。
You have a bad reputation.
 学生・博士研究員が実験室・実験準備室を汚く使う。
 →訪問者・短期滞在者・周りの学生・博士研究員の方が使い方が汚いと思う。
 →悪い評判がたつ。
  ・外部審査の方が実験室・実験準備室が汚い様子を直接見る。
  ・学会などで使い方が汚いということが共有される。
 →人事権を持つ人たち(教授・准教授)は実験室を荒らす学生・博士研究員を好まない。
 →本人を含めた学生・博士研究員の将来の就職先が減る。
 →「あなたはこのことに責任が取れますか?」と聞く。
ひどい場合は打つ手なし。お手上げ。関わらなくて良い場合は関わらない。

(9) 不満・愚痴の多い人、怒る人


 1) 予期される結果
  @自己正当化
   →伸びない
自己正当化する(人のせいにする)。
 →自分が問題解決能力に乏しいことに気付かない
 →自分の問題解決能力を向上させれば良いことに気付かない。
 →伸びるための努力をしない
 →伸びない
   伸びが遅い(周りが伸びている状況では伸びが遅いは伸びないにほぼ等しい)。
  A孤立
   →伸びない
不満・愚痴をいつも聞くのはイヤ。怒られるのもイヤ。
 →話したくなくなる。
 →孤立する。
 →手助けをしてもらえなくなる。
 →伸びない
   伸びが遅い(周りが伸びている状況では伸びが遅いは伸びないにほぼ等しい)。
 2) 原因 原因の一つは、問題解決能力乏しいこと。
 →思い通りにならない
 →ストレスを感じる。
 →イライラする。
 →不満愚痴を言う。怒る。
   (問題解決能力の高い人は周りの課題をどんどん片付けて晴れやかにしている)
 3) 行動パターン
自己中心的な人は、不満愚痴をよく言い、怒る気がする。
関連しているのだと思う。
  @不満・愚痴が多い 口癖がある。
 Too much work.
 I lost. I completely lost.
  A嫌なため息
  B怒る 怒る。
人のせいにする。
周りの人を圧迫する。(早くしろと言う)
やったことがないことは出来ないと言い張る(自分の知識不足をなんとも思わない)。
 4) 対策
  @不満・愚痴の多い人 以下のことを言ってみる。
 ・くだらない文句があったら努力をした方が良いのでは?
 ・適切な文句があったらその人・その人の上司に言った方が良いのでは?
  (私は恫喝されたことがあるので止めた方が良い場合もあります。)
  A怒る人 打つ手なし。お手上げ。関わらない。
  【参考図書】 任せる技術(小倉広)
 (自分に矢印を向けることを求める、120-125ページ)
 (手を貸さずにジャンプさせる、88-93ページ)