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蒸着装置の選び方

注意事項

観察・分析目的に合わせて適切な蒸着装置・設定条件を選ぶことが重要です。また蒸着装置に試料を入れる前にしっかり乾燥させて置くことも重要です。以下に当センターにある蒸着装置の特徴を簡単に紹介します。

イオンスパッター

低真空中で高電圧を掛けてグロー放電を引き起こし、発生した陽イオンがターゲット金属(陰極)に衝突することで形成される金属微粒子が試料表面を覆うことで、試料に導電性を持たせる装置です。ターゲット金属には、金、白金、白金パラジウムなどが使われています。ターゲット金属によって、粒形や二次電子の発生効率が異なります。当センターで利用している白金の粒径は10-20 nm程度です。ターゲット金属を簡単に変更できること、低真空状態での散乱を利用しているため試料への回り込みが良く、比較的複雑な形の試料でもしっかり蒸着できることが利点です。蒸着の際に発熱すること、どの金属を使っても比較的X線の吸収が大きいこと(軽元素を測定する際は注意が必要)が欠点です。

カーボンコーター

高真空中でカーボンファイバーを加熱、蒸発させて、カーボン微粒子(2 nm程度)を試料表面にコーティングする装置です。カーボンファイバーは純度が高く、不純物をほぼ含みません。真空値と試料台の高さを調節することで膜厚を簡単に制御することができます。イオンスパッターと比べて、発熱量が低い(それでもいくらかの熱は発生しています)、蒸着粒子が小さい、元素分析の邪魔になりにくい、等の利点が挙げられます。欠点は回り込みが弱く、複雑な構造物の蒸着には不向きなことです。

オスミウムコーター

真空容器内に四酸化オスミウム昇華ガスを導入し、グロー放電を利用してオスミウム陽イオンを発生させ、陰極上に置かれた試料表面にオスミウム膜を作らせる装置です。オスミウム陽イオンを利用しているため非常に回り込みが良く、表面構造が複雑な試料でもムラなく蒸着できます。また、形成されるオスミウム膜は非晶質のため粒子状の形態が見えることはありません。オスミウム膜は導電性・耐熱性に優れており、極薄膜(2 nm程度)であっても帯電しません。欠点は蒸着の際に試料から発生するガスに非常に敏感なことです。オスミウム陽イオンを用いて蒸着するため、試料から微量であってもガスが発生しているとうまく蒸着できません。試料は事前に完全に乾燥させておく必要があります。