電子顕微鏡のページ

研究履歴

学部時代(信州大学)

信州大学ではフィールド調査の仕方を徹底的に教わりました。地図の読み方、走向・傾斜の測り方、ルートマップ・柱状図・岩相区分図の作り方、露頭の見方、野外での岩石鑑定方法、等々とにかく野外で多くのことを教わりました(一番最初の実習は、新品のハンマーを慣らすために500回岩石を叩く、でした)。卒論では、北海道芦別地域の堆積岩を調べました。年代ごとにサンプリングを行い、鉱物組み合わせや化学組成の変化から後背地の火成活動の変遷を推定しました。

具体的には、10日間程度の現地調査、偏光顕微鏡によるモードカウント(薄片内の各鉱物の存在割合を調べること)、XRFによる全岩化学組成分析を行いました。当時の私にとって堆積岩の鉱物鑑定は非常に難しく(後に世間一般でも非常に難しいことを知りました)、毎日必死になって偏光顕微鏡を覗きました。一日の大半をそうして過ごしていると、目を瞑ってもクロスニコルのキラキラした世界が瞼の裏に見えるようになりました。この卒論を通して何かを「記載する」ということを覚えました。

修士時代(神戸大学)

周りの先輩達の圧倒的な体力を目の当たりにするうちに、ひ弱な私にフィールドワークは向いていないと思い、研究分野を変更しました。とはいえ、石のことを忘れるのも寂しかったので宇宙からやってきた石、隕石を研究することにしました。調べると神戸大学の某研究室で電子顕微鏡で隕石の観察・分析を行っていることがわかり、そちらへ移りました。

電顕(SEM)で初めて隕石を見たときは、その分解能の高さと操作の簡単さに感動しました。特にボタンを押せば局所領域の化学組成がわかり(EDS付属でしたので)、すぐに鉱物同定ができることに驚きました(もちろん簡単に判断できない場合もあります)。驚いた分、電顕と偏光顕微鏡の違いを知りたいと強く思いました。本で調べたり、先輩に聞きまわったりすることで、少しずつ装置に詳しくなっていきました。

修論では、電顕(SEMとEPMA)を使って隕石を詳細に観察・分析し、その形成過程を推定しました。隕石の構成鉱物、各鉱物の存在割合・化学組成・形状・分布・サイズ、などを詳細に調べました。私が研究した隕石(炭素質CMコンドライト)は、水による変成を受けている隕石です。変成を受けることにより、どのような変化が見られるのかに着目しました。二次電子像や反射電子像といった画像として見えているものを、どう記載すればよいか、どうやって定量化するのかを学びました。

博士時代(神戸大学)

修士に引き続き、隕石の形成過程の研究をしました。とは言え、修士と同じままではいけないと思い、いくつかの新しいことに手を出しました。TEMの操作を覚えたり、放射光施設に行ったり、NASAや国立極地研究所から試料を取り寄せたりしました。研究室の外に出ることで多くの人に出会い、たくさんの刺激を受けて、少しだけ成長しました。

博論では、修論同様電顕(SEMとEPMAとTEM)を用いて隕石を詳細に観察・分析し、その形成過程をより詳細に検討しました。TEMの利用により、電子線回折図形や格子像などから結晶構造の情報が得られるようになりました。研究手法は学部の頃から変わらず、詳細な記載から出発し、そこから定量的なデータを抜出し、考察を進めていきました。

具体的には、修論同様、水による変成を受けた隕石の形成過程を研究していました。その中でも特に変成程度の弱いものに着目しました。変成が進むと激しく組織が変化するため、元々の組織を推定することは困難です。従って、変成程度の弱い試料を集中的に調べること(見つけること)が重要です。その変成程度の弱い試料に残された組織的特徴から、変成のあった場所が星雲中ではなく、隕石母天体であったことを推定しました。修士の頃の研究と合わせて、母天体上でどのように変成が進行したのかを博士論文としてまとめました。

現在

広島大学自然科学開発支援センター機器分析部門にて、FE-SEM(EDS付属), TEM(EDS付属)、蒸着装置(白金、カーボン、オスミウム)、試料作製装置(イオンミリング、研磨盤、ダイヤモンドホイルソー)の管理・運営を担当しております。FE-SEM, TEMの依頼分析(試料作製含む)も担当しております。無機材料を観察・分析することが多いですがそれ以外のもの(蝶の脚、カニの甲羅、細菌等)も可能であれば観察致します。

依頼分析に興味をお持ちの方は、一度ご相談下さい。

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