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重み付き最小2乗法によるレンジデータの微分幾何学的特徴の計算

3次元世界の情報を直接収集するための有力な手段として、レーザを用いた高性能の レンジファインダが開発された[145]ことにより、レンジデータ(距離画像) の処理に関する研究が盛んに試みられている [17,18,38,173]。レンジデータを用いると、通常 の濃淡画像では抽出が難しい物体の形状に関する幾何学的情報を直接得ることができ る。こうした物体曲面の幾何学的な情報を用いると、物体認識や計測などの問題を簡 単に解ける場合が多い。

Besl等[17] は、微分幾何的観点から曲面を特徴付ける方法を示した。平均 曲率およびガウス曲率は観測方向に依存しない局所特徴であり、その符号の組合せに よって局所曲面を8種類のタイプに分類できる。従って、もしレンジデータから局所 的な曲率を正確に推定することができれば、曲面を同じ性質を持ついくつかの領域に タイプ分けすることができる[38]。

各点の平均曲率とガウス曲率は、局所領域内でレンジデータに2次曲面を当てはめ、 $1$次および$2$次の偏微分値を推定して計算される。しかし、この方法では、ジャン プエッジやルーフエッジなどの不連続点付近で不正確な推定値しか得られない。この 問題に対して、Fan は、まず、エッジを抽出してから曲率を計算する方法を提案した [27]。一方、横矢らは選択的に局所曲面をあてはめて偏微分値を推定し曲率 の計算に利用する方法を提案した[173,174]。

一方、 Boulanger は、観測方向に依存しないで、しかも、ジャンプエッジやルーフ エッジなどの不連続点を保存するような距離画像のスムージングフィルタを提案した [19]。そこでは、曲面上の2点間の最小軌道長とその最小軌道に沿っ た法線ベクトルの変化の大きさに依存した重みを用いてフィルタを構成した。

ここでは、Boulanger の提案した重みを用いて、参照点回りの局所領域内で重み付き 最小2乗法によって2次曲面をあてはめて$1$次および$2$次偏微分を推定する。参照 点とジャンプエッジを挟んで反対側にある点の曲面上の最小軌道長は大きくなるので、 そうした点の重みは小さく設定される。また、参照点とルーフエッジを挟んで反対側 にある点では法線ベクトルの変化が大きくなるので、そうした点での重みは小さく設 定される。結果として、参照点と幾何学的に滑らかに継った点の情報を重要視して2 次曲面があてはめられるようになる。従って、不連続点の影響を受けにくい偏微分値 の推定が可能となる。



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Takio Kurita 平成14年7月3日