ウニの形態形成機構の解析

Ets遺伝子

Ets癌遺伝子は、もともとニワトリの形質転換ウイルスE26によって発現が誘導される融合遺伝子の一部として発見された。EtsはDNA結合保存配列を含んでおり、これまでにさまざまな動物種から発見されたEtsファミリーに属する因子は30を越える。機能は多岐にわたり、ショウジョウバエの神経分化、ツメガエルの卵成熟、リンパ球の分化などさまざまである。

ウニ胚ではEts mRNAは未受精卵から存在し、初期胞胚期までは胚のすべての細胞で発現している。ところが一次間充織細胞が分化する直前になると、発現は予定一次間充織細胞に限定されるようになる。予定一次間充織細胞は、植物極を中心にドーナツ状に分布しているが、発生が進むと胞胚壁の細胞と接着を切って胞胚腔に落ち込み、動き回った後、互いに細胞融合してシンシチウムをつくり、その中に骨を形成する。

ウニ胚におけるEtsの機能を調べる目的で、ドミナントネガティブ実験を行ったところ、一次間充織細胞の分化のみが阻止され、骨を欠く胚になった。一方、Etsの強制発現胚では、胚のほとんどすべての細胞が運動性を獲得し、一次間充織細胞特異的な遺伝子SM50を合成した。ツメガエルでEtsが遊走性神経冠細胞にEtsが発現することなどを考えると、遊走性の獲得がEtsの主要な機能の1つと考えられる。

 

・Kurokawa et al., HpEts, an ets-related transcription factor implicated in primary mesenchyme cell differentiation in the sea urchin embryo. Developmental Biology (1999) doi: 10.1016/s0925-4773(98)00192-0.