ウニの形態形成機構の解析

小割球由来細胞の分化カスケード

一次間充織細胞は最も植物極よりの小割球細胞由来であることから、一次間充織細胞特異的に発現する遺伝子の転写調節を足がかりとしてカスケードを遡れば、動植物軸形成に迫ることができる。一次間充織細胞は骨を形成する細胞に分化する。骨のマトリックスタンパク質のSM30とSM50は一次間充織細胞特異的に発現する。これらの遺伝子調節領域には転写調節因子Etsの結合部位があり、この部位が転写の活性化を担うことが明らかにされている。実際、Ets遺伝子は一次間充織細胞特異的に発現し、その強制発現によって、胚の全ての細胞が運動性を獲得し、SM50タンパク質を合成する。これらの結果は、Etsが一次間充織細胞分化のカギとなる転写因子であることを示している。そこでEts遺伝子の転写調節領域を解析し、一次間充織細胞特異的発現を司るシスエレメントの同定を試みている。さらにシスエレメントに結合する結合タンパク質をone-hybrid法によりクローニングする予定である。

最近、我々のグループでは一次間充織細胞特異的に発現する転写因子T brainをクローニングした。機能阻害実験の結果から、T brainは原腸形成誘導シグナルの小割球からの分泌に関与することが明らかになった。Ets遺伝子と同様に一次間充織細胞分化のカギとなることから、Tb遺伝子の調節領域についての解析も進行中である。