3.「石川・宜野座定置網協会」の結成の背景と活動目標 |
本協業体の名称は「石川・宜野座定置網協会」である。大型定置網2ヵ統(宜野座村漁協A定置網グループ,石川市漁協B定置網グループ),小型定置網1ヵ統(石川市漁協C小型定置網グループ)の合計3ヵ統10名から構成されている(表3)。石川市漁協の所属するB氏・C氏と宜野座村漁協所属のA氏という所属漁協の異なる定置網経営者とその乗組員らが結成した組織である。
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1)「協業体」結成の背景 |
近年,定置網の水揚量・水揚金額とも減少傾向にある。1990年代には大型定置網は2,000万円,小型定置網は500万円〜700万円の水揚金額があった。しかし,現在はその半分以下にまで減少しており,経営改善をいかに図るのかという点が課題になっている。
こうしたところ,沖縄県から「中核的漁業者協業体取組支援事業」を紹介され,2002年に協業体を組織した。協業体の結成を検討した際,自己負担分の資金をどう捻出するのか,漁具購入の際の出資割合や利益配分をどうするのかという点が論点になったものの,協業体を組織した3経営体は以前より機械類や労働力の貸し借りを行う関係にあり,比較的スムーズに協業体が組織された。その後は水産業改良普及センターや漁協職員の協力などを得ながら取り組みを進めている。 |
2)「協業体」の結成目的と活動目標 |
本協業体の結成目的は「定置網漁業と観光事業との組み合わせによる漁家経営の改善」である。この目的を達成するため,漁業共同改善計画には次のような6項目の目標が設定されている。
まず,「経営改善の方向性」では,「それぞれの経営体が小さいことによる資本不足,人員不足により網の修理や網替えができず,経営に支障をきたしている」という現状にあることを説明し,「資本不足,人員不足を解消し,安定した漁業経営及び新たな担い手を育成し,活力ある地域社会の構築に向けて寄与する」という目標が示されている。
次に,「資源管理又は漁場保全に関する事項」としては「定置網管理の一環として,漁場及び周辺海域の環境美化に積極的に取り組んでいる」という現状説明がなされており,「漁場保全,資源回復を図り,水質良好な海域を維持させ,永続的な定置網漁業を可能とする」という目標が定められている。ただ,漁場保全や資源回復に関する具体的な事柄は事業計画には示されていない。
「生産物の販売・加工による付加価値増大に関する事項」では,「十分な保管スペースがないため,大漁時には漁獲物の一部を餌料用としても出荷しているが,販路に苦慮している」,「地元の新鮮な魚であることをアピールできていない」という現状にあることを説明し,「出荷調整用の生簀を設置することにより,量販店への大口出荷が可能になり,また悪天候時の魚不足時に出荷することにより収益増大を図る」,「店舗に地元産であることを示したポスターを展示し,消費者へのアピールを行う」といった具体的な目標が示されている。2002年当時の水揚量を今後も見込んだうえで,それらをいかに高値で販売するのかという点が検討されている。
「新規就業者等の確保育成に関する事項」では,「経営悪化のため,新規就業者を受け入れるのは難しい」いう現状説明がなされた後,「新たに設置する体験学習定置網漁業による経営改善を図り,後継者育成に努める」としている。近年の水揚金額減少によって定置網乗組員として新規就業者を受け入れる余地はなく,海洋レジャー事業を組み合わせることによって経営を改善し,乗組員としての新規就業を可能にしようとの試みである。
「研修に関する事項」では,「独自で県内先進地視察等実施」という現状に対して「県外海外の各種研修会に積極的に参加し,経営改善を図る」としている。年間6回,研修会を開催する計画であるが,事業計画にその具体的な内容は示されていない。
「その他」の内容には海洋レジャー事業に関する記述がある。海洋レジャー事業は「民間企業からの体験学習定置網漁業と体験漁業に頼っている」ため,今後は「新たに体験学習定置網漁業専用の大型定置網を導入し,協業体自身で集客し,経営改善を図る」ことが目標として掲げられている。つまり,協業化を契機に海洋レジャー事業向けの定置網を設置して協業体で主体的に宣伝・受入などを行い,海洋レジャー事業を発展させることによって経営改善に結びつけようという発想である。
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