Study 02

リンとバイオ

生命の必須元素Pをあやつる

じめに

リン(P)はDNA, RNA, リン脂質などの有機リン酸化合物として生命を構成する必須元素である。実は生命の中には無機のリン酸化合物が含まれる。ポリリン酸はリン酸だけのポリマーで、亜リン酸(H3PO3)は+3価のリン酸(通常は+5価のH3PO4)のリン酸である。我々はこの無機リン酸化合物に焦点をあてて研究を行っている。
 

ポリリン酸

ポリリン酸はATP と同様の高エネルギーリン酸結合からなり、リン酸ナトリウムなどを単に数百℃で加熱するだけで縮合して合成されることから、原始地球環境で比較的豊富に供給された太古の生命エネルギーと考えられている。
ポリリン酸キナーゼ(PPK)は故アーサーコーンバーグ博士が見つけた酵素で、ATPからポリリン酸を作る酵素である。ADPとポリリン酸があると逆に反応するので、この反応を利用するとATPを作ることができる。
我々はポリリン酸の代謝制御機構の解明だけでなく、応用としてポリリン酸を使ったATP再生や、ポリリン酸を蓄積する(リンを蓄積する)生物を作り出したりしている。

 

 

亜リン酸

リンの酸化数は−3価から+5価までとりえる元素である。亜リン酸(H3PO3)はリンの酸化数が+3価のリン酸である。通常生物界のリン酸は+5価のリン酸(H3PO4)なので直接は利用できないが、微生物の中に亜リン酸を酸化する酵素(PtxD)が見つかった。PtxDはNADを補酵素として+3価の亜リン酸を+5価のリン酸へ酸化する。原始地球の環境は、非常に還元的で、還元型リン酸を微生物が利用していたのではないかとも考えられている。
我々は、亜リン酸を利用できる生物や、さらに亜リン酸がないと生きていけない生物をつくりだしている。また亜リン酸によるNADH再生系を開発している。

 

 

 

   

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